七夕賞でケントク買い票を考慮した馬券作戦を考える【獣医師記者コラム・競馬は科学だ】
◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」 七夕賞は年に1度だけ、ケントク買いが定点観測できる。ケントク買いとは、馬の実績や調教など本筋の論点とは全く関係なく、時事などに沿った語呂合わせで投票するもの。一般にはどんな目に投票されるのか推定しづらいが、七夕賞に限っては「枠連7-7」への過剰投票が必ずある。 記者は1992年以降の定点観測を続けている。馬券的に同じ意味の馬連と比べて、枠連のオッズが高かったことはただの1度もない。馬連に投じられた票数と同じ割合で枠連に投じられた場合の仮想値より、実際の枠連7-7への投票額が多かった分を「過剰投票額」とすると、これが最も多かったのが1996年の約1930万円。近10年ではおおむね150万円くらいで推移している。昨年はちょっと多くて約285万円もあった。 だから七夕賞の枠連7-7だけは買ってはいけない。該当する目が予想の結論であれば、馬連で買えば良い。この現象をもう一歩踏み込んだ馬券作戦に役立てられないだろうか。 枠連7-7への過剰投票分は、枠連のほかの目のオッズをいくらか押し上げるはずだ。例えば昨年の七夕賞では馬連における4つの出目について「その馬連が的中するなら、的中となる枠連の目」のオッズの方が直接上回っていた。ただ、この程度の現象であれば、通常の競走でもしばしば起こる。 そこで昨年の七夕賞の枠連全ての目について、馬連への投票数をベースに、枠連オッズがいくつであれば適正だったか計算した。同じくサマー2000シリーズのハンデ戦である小倉記念でも同様の計算処理をして、比較したのが別表だ。 「適正枠連オッズ」としたのが馬連への投票実績と同じ票の集まり方をした場合の「枠連の適正と思われる仮想オッズ」。赤く塗ったのが実際の枠連オッズの方が高いケース、緑が安いケース。同オッズを示したのは黄色で示した。赤の目は枠連を買った方が”お得”、緑の目は馬連の方が”お得”ということになる。 七夕賞では枠連全36通りのうち、半数近くの17通りの目で枠連が”お得”という数値を示した。小倉記念では10通りにとどまるのと好対照だ。 七夕賞で枠連7-7を買うのは明確に損。一方で7-7以外の目に関しては、枠連の方が有利な資金配分がある可能性を検討するだけの価値がありそうだ。
中日スポーツ