【相撲編集部が選ぶ九州場所2日目の一番】3大関連勝。豊昇龍は2日連続の会心の相撲が光る
“ニュー豊昇龍”となりつつある今場所は、ここ数場所にはない手ごたえがあるとみて間違いなさそうだ
豊昇龍(押し出し)若元春 「飛ばしたとは思ってなかったんですけど、(映像を)見たら飛んでましたね」 【相撲編集部が選ぶ九州場所2日目の一番】右ヒザの大ケガから奇跡の復活。友風が4年2カ月ぶりの幕内白星挙げる 実力者の若元春を、土俵下まで吹っ飛ばした。豊昇龍のパワーが早くも全開だ。 3大関がそれぞれに連勝と星を伸ばしたこの日の土俵。中でも動きの良さが目立つのが、先輩大関の豊昇龍だ。 この日の相手は小結の若元春。対戦成績では、このところ7連勝と圧倒しているが、中にはヒヤリとする相撲も含まれており、油断のできない相手であることは間違いない。 その相手を、会心の相撲で退けた。まず立ち合いはモロ手突き。右をグイッと伸ばして相手をのけぞらせた。さらに左ハズの攻め。若元春は何とか得意の左を差して立て直そうとするが、このあたりは、よく稽古している相手でもあり、豊昇龍はお見通しだ。相手の左差しを嫌うのではなく、むしろその左を利用して攻める。突き落としか、小手投げか、という動きを見せながら右に回って相手を崩すと、そのまま黒房下に押して吹っ飛ばした。 「当たって突いて起こす」→「右に回って崩す」→「中に入って攻め切る」のよどみのない流れは、初日の王鵬戦とまったく同じで、2日連続の会心の内容だ。本人も「“前に出ない大関”と言われたのが嫌だった。前に出たのでいい感じ」と語っているが、とにかく今場所は、立ち合いから攻め、先手先手で相撲を展開しているのが目立つ。 今年の豊昇龍は、7月場所で琴櫻を投げたときに右足の内転筋を痛めてしまったことがあったが、おそらくこのあたりの反省もあるのだろう。受けて投げで仕留めるような相撲からの脱却を目指していることは明らかだ。さらには、このところ体重も増やしており、150キロ前後に。このあたりはやはり、琴櫻や大の里といった大型の相手に伍していくためだろう。「これまではちょっと(体重に)慣れていないところがあった」(豊昇龍)のが、稽古を十分重ねたことで慣れてきたということも、動きの良さの一因としてあるようだ。 先場所までは4場所連続で初日に敗れるなどスタートが悪く、初日、2日目の連勝は1月場所以来。この1年は初日から5連勝した場所は一度もないだけに、“ニュー豊昇龍”となりつつある今場所は、ここ数場所にはない手ごたえがあるとみて間違いなさそうだ。 いつも、大の里戦について「楽しみにしてますよ」と語るなど、迫ってくる後輩への意識を隠そうともしないタイプ。大関としての優勝を先には許さない、という気持ちは当然あるだろう。今場所は、何としても先輩大関としての意地を見せたいところだ。 この日は、琴櫻、大の里の二人も、初日とは打って変わって攻める相撲でチャレンジャーを一蹴し、乗っていくきっかけをつかんだような感じもみえる。一方で、関脇霧島は宇良に敗れて連敗、さらには平幕下位のダークホース候補と見られた返り入幕の尊富士にも土がついて、関脇以下で追ってくる力があるとすれば若隆景ぐらいか……、という情勢になってきた。 果たしてこのまま3大関の優勝争いという展開になっていくのか。どうせなら、3人のライバル意識バチバチのハイレベルな争いで、横綱不在を吹き飛ばすような、面白い場所にしてもらいたいものだ。 文=藤本泰祐
相撲編集部