【特集】第4の治療「緩和ケア」その人らしく生きるための力に…がん患者に寄り添う看護師の思い
テレビ信州
特集、テーマは「緩和ケア」です。がんの3大治療と呼ばれているのが「手術」、抗がん剤を使う「薬物治療」そして「放射線治療」です。これに加えて、最近第4の治療と言われているのが、「緩和ケア」です。緩和ケアに携わるある看護師の思いを取材しました。 10月・松本県ケ丘高校授業 長野県教育委員会事務局 小野直也 指導主事 「みなさんは がんについて考えたことはありますか?」 10月、松本県ケ丘高校で行われたがん教育の授業。生徒たちに、「いのちの大切さを考えてほしい」と、企画されました。 講師は信州大学医学部の青木薫准教授です。がんの正しい知識を持つことは生徒自身や周りの人ががんになったとき、ひとつの支えになると考えています。 信州大学医学部保健学科 青木薫准教授 「緩和ケアっていうのはもう助かりませんよと宣言されたからのもではなく がんと診断されたときから始まるとされています」 生徒は 「緩和ケアは聞いたことぐらいはあったんですけど がん治療とってなかなか知らなかったので確かにがん治療は精神がつらくなっちゃうって聞くので緩和ケア大事だと思います」 がん教育の場でも取り上げられる「緩和ケア」。がんと診断されてから患者とその家族の(クオリティオブライフ=)生活の質を上げるための医療、取り組みです。身体的苦痛のほか心の痛み、社会的な悩みなど様々な問題に医師や看護師だけでなく多職種でサポートします。 「緩和ケア外来」がある県内の病院は18。さらに緩和ケアのための「病棟」を持つのは6病院、県内に120床しかありません。 しかし、専門の外来や病棟がなくても緩和ケアに取り組む病院もあります。松本市の松本市立病院もそのひとつ。 がん性疼痛認定看護師 吉田ひとみさん 「(中信地域だと)丸の内病院さんだけだと十何床しかなかったりという狭き門ではあるのでそうなったときに 最善の療養先って何なのかを一緒に考える場所。お家帰りたいって言ったら家帰る選択肢もあるし」 認定看護師の吉田ひとみさん。この病院で緩和ケアに携わる1人です。 多職種カンファレンス 「お部屋(病室)まで家族が入れたのでそれが凄く本人にとってはよかった ゆっくり話せたり」 治療方針から、日常生活に至るまで専門知識を持ち寄りチームとして患者1人1人、その人らしい生き方に寄り添います。 (松本市立病院病室) 吉田看護師 「何か食べてみました?」 内田さん「今トマトジュース飲んだ」 吉田「少しずつならお口入ります?」 内田「甘くないものがいいですよね。 わりとスッキリしたのがいい 本当は甘くないアイスクリームが食べたいんだけど」 内田和成さん、72歳。今年の夏、がんと診断されました。転移がすすみ薬による痛みのコントロールを受けていました。 内田和成さん 「なかなか 本当に会社をあげて協力してくれますんで 自分としては本当に幸せですね」 長年、設備関係の会社で働いてきました。仕事仲間に恵まれてきたという内田さん。取材カメラにこんなメッセージを託しました。 内田和成さん 「マスコミを通じて(世の中に)会社が社長とか上役が面倒見のいい会社がどんどん育って従業員が本当に安心して働ける会社がどんどん増えてほしいよね それが一番の願い」 仕事を辞めざるを得ない若者たちを憂い、人生最期の時を迎えつつある中で願うことです。 入院中の内田さんには心待ちにしていることがありました。 内田和成さん 「来週ね自分の孫たちがね彼女連れて来るって言うでね それまで頑張らなきゃいけない」 吉田看護師 「楽しみができたね。用事あるときは押してください」 内田さん 「ありがとね」 最愛の孫に会えた翌日…、内田さんは亡くなりました。 がん性疼痛認定看護師 吉田ひとみさん 「(内田さんは)すごく穏やかな顔をされてました。それなりに痛みもあったけど しゃべってたんですよね 。ギリギリまで。苦しまずに最期を迎えられたかなって」 (木曽看護専門学校) 「おはようございます」 吉田さんは9年前から木曽看護専門学校で教壇に立っています。 がん性疼痛認定看護師 吉田ひとみさん 「痛みって警告信号って言われてて自分の身を守るために絶対必要な信号なんですよ」 目の前にいるのは看護師を目指す学生たち。 がん性疼痛認定看護師 吉田ひとみさん 「患者さんにとって痛みって何だろう。じゃあこの患者さんの生きるって何だろう」 学生は 「痛みって言ったら身体的なイメージがあったんですけど精神的、社会的な痛みもあるとうかがって幅広く視点をもって患者さんを捉えていくことが重要だと感じました」 2人に1人ががんになると言われる今。緩和ケアはその人らしく生きるための力となります。 がん性疼痛認定看護師 吉田ひとみさん 「ああしてあげるとよかったかなってそういう思いは常に残るというか(患者さん)その人の思いが叶えられたかなあとか天国行ってどうしてるかなあとか思いながら日々過ごしています。」