副反応のイメージ強い 子宮頸がんワクチン初回接種進まず 16~27歳対象 全国トップクラスの島根、鳥取でも1割
国が、子宮頸(けい)がんワクチン接種の推進を中止していた16~27歳の女性を対象に、再度勧める「キャッチアップ接種」が進んでいない。副反応のイメージが強く、必要な3回接種のうち2022年度に1回目を接種した人の割合は、全国トップクラスの山陰両県でも1割程度にとどまっている。 【データで判明】ワクチンで予防可能も接種低迷 AYA世代の女性 子宮頸がんが最多
13年にワクチンの無料定期接種が始まった直後、全身の痛みやしびれなどの重篤な症状が報告されるようになったのを受け、国は積極的な勧奨を中止した。 厚労省はその後、安全性に対する懸念がなくなったとして、勧奨中止期間の対象だった1997~2007年度の間に生まれた女性を対象に、22年度に無料接種を始めた。 しかし、厚労省によると22年度の初回接種率は全国で6・1%。全国の都道府県で接種率が最も高い島根で10・8%、5位の鳥取で9・1%にとどまる。無料接種の実施を知らない人が多いのに加え、接種しない理由として健康被害への心配の声があるという。 松江市は、対象者の自宅に接種通知を送っているものの、22年度の初回接種者は7・6%、23年度は6・0%と伸び悩み、夏休み期間にインスタグラムで周知するなど工夫を凝らす。 3回接種するには6カ月間が必要で、24年度中に3回接種しなければ有料のため、9月末までの1回目接種を呼びかける。無料の期間を過ぎると3回で計8万~10万円の費用がかかるといい、市予防接種室の川上貴史室長は「無料接種ができる今のうちに検討してほしい」と話す。
対象年代の学生が通っている島根県立大(本部・浜田市)では、136人が回答したアンケートで接種の予定はないとする学生が62%を占め、その多くが「副反応が怖い」と答えた。 このため、出雲キャンパス(出雲市西林木町)の学生3人が産婦人科の医師を招き、ワクチンの有効性や副反応を学ぶ講演会を開いた。企画した1人の小川璃子さん(22)は「自身も副反応の印象が強くためらっていたが、正しい知識を得て、安心して接種できた」と話す。 厚労省によると、子宮頸がんにかかる人は1万人に132人で、2価、4価ワクチンと呼ばれる従来型の接種後に重い症状を訴える人は1万人に5人。島根大医学部の竹谷健教授は「子宮頸がんにかかった人の3分の1は亡くなり、3分の1は子宮を摘出することになる」と説明。「ワクチンを打てば命が助かり、子どもが産めなくなるリスクもなくなる」と話している。