「仕事を学ばせてくれた恩師です」人気声優・小野賢章が語る「声優界の母」と「尊敬するレジェンド」
小野賢章さんが山寺宏一さんを尊敬する理由
――山寺宏一さんはディズニー・アニメーション『アラジン』のジーニー役、『攻殻機動隊』シリーズのトグサ役、『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの加持リョウジ役など幅広い役どころで知られるレジェンドです。 小野 声を聴いたら映画『マスク』の主人公の声も担当されていて。そのことがわかって感動してしまいましたね。 ――小野さんが印象に残っている山寺さんの作品はなんですか? 小野 そうですね。『エヴァンゲリオン』シリーズの加持リョウジさんの声が好きで、「しゃべり方や言い回しはこんなふうなんだ?」ってマネをしていました。僕にはアニメが好きな兄がいるんですけど、彼から『カウボーイビバップ』を教えてもらって、スパイクがカッコいいなと思いましたね。あんな作品があったらぜひやってみたいなって思います。 ――山寺さんと共演されたことはありますか? 小野 山寺さんとご一緒したときはやっぱり緊張しましたね。ただ、ありがたかったことに僕がずっとやってきた舞台で共演することができたんです(2015年『パパ、アイ・ラブ・ユー!』ラフィングライブ)。自分が自信のあるフィールドで共演できたというのはけっこう大きかったかなと思います。 山寺さんはこれだけキャリアを積んでいらっしゃるのに、まだまだ追求されていて、自分のお芝居にさらなる磨きをかけていらしたんです。常に新たな引き出しを探していて、常にそうやって上を求めているんだと思いましたね。役者という仕事の奥深さを感じました。
小野さんにとっての「声優界の母」
――小野さんのキャリアにおいて、影響を与えた方やご自身のキャリアを支えた恩師を挙げるとしたら? 小野 影響を与えてくださった方、恩師と呼べる方はたくさんいるんですけど、そのなかでもお世話になった方というと、音響監督の木村絵理子さんです。木村さんとは映画『ハリー・ポッター』シリーズのときからいろいろな作品でご一緒させてもらっているので、僕にとっては声優界の母みたいな存在ですね。 ――木村絵理子さんは、アニメ『四畳半神話大系』や映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』など多数の作品で音響監督を務め、スタジオジブリ作品の『崖の上のポニョ』『風立ちぬ』『君たちはどう生きるか』などでアフレコ演出を務める、ベテランです。木村音響監督とは、いろいろな作品でご一緒されていますよね。 小野 最初は『ハリー・ポッター』シリーズでお世話になりましたが、声優アワードで主演男優賞をいただいた『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』も録音演出が木村さんだったんですよ。声優アワードを獲らせていただいたときは、木村さんにちょっとだけ恩返しができたなと勝手に感じていました。 ――木村さんとごいっしょするお仕事の魅力とは? 小野 木村さんの現場は、納得いくまでやらせてもらえるんです。僕たち声優は表現をする仕事をしていますが、その表現のジャッジは音響監督や監督が下します。だから、役者自身は「正解」だと思っても、「違う」と言われてしまうことがある。そういう「違う」というジャッジをされたときに、木村さんは僕らが納得するまでディスカッションをしてくれるし、「この言い方は違ったけれど、こういう別のアプローチだったらどうだろう?」と道を示してもくれる。そうやって、とことん付き合ってくださる方なんです。 ――役者さんを信頼されていて、その実力を引きだす力をお持ちの音響監督さんなんですね。小野さんの魅力は、そこで育まれた部分も大きいのかもしれません。 小野 木村さんは、自分なりに達成できたと思えるところまでやらせてくれて、後悔が残らない仕事をさせてくださる。そうやって仕事を学ばせてくれた恩師ですね。
志田英邦