『宙わたる教室』は今までにない学園ドラマに 小林虎之介がガウのために叫ぶ
岳人(小林虎之介)が仲間のために一肌脱ぐ
事情を知った藤竹はどうにかしたいが、黒田の両親はこのことを傷害事件として警察に届け出ない代わりにアンジェラの退学を要求しており、2年生になってから勉強についていけなくなっていたアンジェラ本人もそれを甘んじて受け入れている状況。こういうとき、通常の学園ドラマなら主人公の教師が規格外の方法で問題を解決するのが鉄板だが、本作は違う。行き詰まった状況を打破したのは、岳人だった。 黒田がマリを犯人扱いする要因には、外見による差別が一つにはあった。岳人も何もしていないのに長嶺から疑われたように、見た目が不良というだけで決めつけられることが多く、それが許せなかったのだろう。頑なにマリを庇おうとするアンジェラを一度は突き放した岳人だが、昼間の学校に乗り込み、大勢の生徒たちの前でペンケースを盗んだ真犯人に「あいつが退学になったらぜってぇ許さねえ!」と物申す。生徒たちは面白がって笑っていたが、その姿はまさにヒーローだった。 結果、無事に本当の犯人が見つかり、退学を免れたアンジェラ。応援してくれている夫や娘のためにも再び学校に通うことを決めた彼女は、噴火実験が何度やっても上手くいかず行き詰まっていた藤竹と岳人にヒントを与える。2人は米酢を使っていたが、実験を成功させるために必要なのは多数の調味料を含み、より粘性の高いすし酢だった。夫と飲食店を切り盛りしており、普段から料理をしているアンジェラだからこそ気づけたこと。まだ読めない漢字があるため全体的に成績が振るわなかっただけで、彼女は経験に基づいた確かな知識を持っていた。 そして、その知識が噴火を起こす。今までで一番嬉しそうな笑顔を見せる岳人を見て、藤竹が「教師にできるのは場所を用意して待つこと」だと言っていた理由がよくわかった。その場所をどんな目的で使うかは生徒それぞれに託されているが、人と人が顔を突き合わせて何かを一緒にすれば、自ずと化学反応は起きるものだ。それが藤竹にとっての壮大な実験なのかもしれない。
苫とり子