【毎日書評】なぜ醤油や味噌「発酵食品」からチームワークが学べるのか?
ビジネスパーソンが発酵業界について知っておくべき意義
発酵業界について知ることは、日本の中小企業や伝統産業について知ることにもつながるそうです。発酵業界は中小企業が多いため、中小企業が大半を占める日本の産業構造への理解が深まるというわけです。 また、発酵業界に限らず、多くの日本の伝統産業もまた、現在、技術の継承と経営母体の継続が課題になっています。発酵業界を理解することは、他の伝統産業の理解にも大きく役立つはずです。(164ページより) たとえばいい例が、海外の人と会食をし、発酵食品や日本の文化の話題が出てきたとき。そこでビジネスパーソンとしての立場から、日本における発酵業界の位置づけや今後の展望、産業構造などについて話すことができれば、より高度な会話が成り立つということです。(164ページより)
同じ発酵食品でも高級ワインと味噌では需要がちがう
ご存知のとおり、発酵食品の価格帯は商品によって大きく異なります。 たとえば高級ワインとして知られるロマネ・コンティなどは750mlのボトルで1本数百万円しますが、スーパーの店頭に並ぶ醤油は同じ750ml入りでも300~400円程度。特売であれば300円を切ることもあるでしょう。 つまり両者の価格には1万倍のも開きがあるわけですが、とはいえどちらも同じ発酵食品の液体です。では、なぜそこまで差がつくのでしょうか? ここまで価格帯が大きく異なる理由は、発酵食品は醤油や味噌など身近な基礎調味料から清酒やワインなど高級なアルコール飲料まで幅広く商品があるからです。それぞれの発酵食品に求められるものは異なります。 特に基礎調味料については、毎日絶え間なく安定して供給されることが第一に求められます。仮に、首都圏で1000万人が毎日味噌汁を1杯飲むとします。味噌汁1杯に必要な味噌の量が1gだとすると、1日に必要な味噌の量は10tです。1年なら3600tの味噌をつくらなければいけません。この量を安定的に供給するには、一定程度に大規模な生産や流通、保存システムの整備が必要です。また、当然ながら求めやすい価格で供給されることが前提になります。(165~166ページより) その一方、「無農薬」「有機」「添加物不使用」などの原材料や、地域に根ざした原料を使用するこだわり、造り手の技術や思い、あるいはストーリーなど、商品が生まれる背景も発酵食品には求められることになります。また、嗜好品である清酒やワインなどには、それらのストーリーを背景とした高付加価値の商品も要求されます。 したがって発酵食品においては、「広くたくさんの人に安く供給する」ことを求められる基礎調味料を中心とした世界と、「厳選された原材料や造り手の思いなどの背景も含めたこだわりやストーリーによる付加価値」を求められる世界が共存しているのです。 さらに近年はそこに、健康志向の高まりにより、手づくりで安全なイメージ、免疫力の向上や機能性など、直接的な健康効果も発酵食品には求められるようになっています。 つまり「発酵食品」とひとことでいっても、消費者から期待されていること、そして、それに応える生産者の体制は大きく異なっているわけです。(165ページより)