「ウクライナ和平交渉は“可能”でない上に、“必要”でもない」と歴史人口学者・トッドが断言するワケ
英訳されないことは「人生最大の知的成功」の一つ
――『西洋の敗北』は、日本も含めて21カ国で翻訳が決まっているのに、なぜか英語版は決まっていないようですね。このことを受け止めておられますか。 トッド 非常に興味深く思っています。通常、非英語圏の著者にとって、「英語に訳されること」は「成功の証」です。これよって「世界に存在する」ことになるからです。実際、私の最近の著作は、難解な本も含めてほぼすべて英訳されています。アメリカ・システムの衰退を指摘した『帝国以後』も英訳されていて、コロンビア大学出版局という由緒ある出版社から刊行されています。 これに対して今回の本は、誰もが興味をもつはずなのに、英訳されていません。私はこのことを「人生最大の知的成功」の一つだと考えています。英米の「アングロ・アメリカ世界」にとって、とても受け入れられない「真実」、広く知られてはならない「不都合な真実」をこの本が描いている、という意味においてです。もはや寛容さを失った「帝国」によって禁書扱いにされたわけです。英訳されないということが、むしろ本書の内容が非常に合理的で正確であることを証明している。ですから、この本の販売促進のためには、「帝国から発禁された書」といった帯を巻いたらよいと思います(笑)。(訳・文藝春秋編集部) ※このインタビューの動画は、「文藝春秋Plus」にて2025年1月上旬に配信予定です。 【「 文藝春秋 電子版 」では、トッド氏の最新対談をお読みいただけます】 E・トッド×成田悠輔「日本は欧米とともに衰退するのか」 トランプ再選と英国政治の混乱は「西洋の敗北」の始まり。はたして日本は……
エマニュエル トッド/文藝春秋 電子版オリジナル