【事業売却】「税引後の売却対価」はいくら?個人・法人の「株式の譲渡所得」にかかる税金を計算
法人の株式譲渡益に対する課税
ここまでで、個人が株式を譲渡した場合の課税関係について見てきました。次に、資産管理会社で保有する株式を売却した場合など、法人の損益として計上される株式譲渡益についても少しだけ触れておきたいと思います。 法人における株式譲渡益は、法人所得の一部を構成します。蛇足にはなりますが、株式譲渡損益は損益計算書上、「営業外損益(または特別損益)」として計上されることが一般的です。株式譲渡益を含む法人所得に対しては、法定実効税率が適用されます。 株式譲渡益に適用される税率を単純比較すると、個人の株式譲渡益に対する税率のほうが低くなりますので、ここだけを切り取ると資産管理会社で株式を保有するメリットがないように感じるかもしれません。しかし、資産管理会社は資産の運用や承継に関してさまざまなメリットを得られる場合があり、M&Aにおいても、資産管理会社を活用した譲渡手法の工夫によって税負担を軽減できる場合があります。資産管理会社を活用するメリットについては、のちほど詳しく解説したいと思います。 今回は、シンプルな株式譲渡のケースにおける課税関係をみてきました。株式譲渡は取引がシンプルで手続きに時間を要しないメリットがあるため、中小M&Aにおいても広く活用されています。 本連載で繰り返し述べてきたように、仲介サービスは「中立の立場で売り手と買い手をマッチングするサービス」です。売り手の利益を守り、追求する機能はありません。したがって仲介サービスから売り手にとって最善の譲渡手法が提案されることを期待することはできません。あとあと「事業売却のときにしっかり譲渡手法を工夫しておくべきだった」と後悔しないためには、やはり売り手支援の経験が豊富なFAに助言を求めるべきでしょう。 ただし、事業売却には「個人資産の売却」という側面があります。M&Aにおける売り手の利益追求だけでなく、個人資産の形成・相続対策などについても一定の知識・経験を持ち合わせており、必要に応じて士業の専門家と連携し、個人のウェルス・マネジメントの観点においても最善を追求することができるFAに助言を求めることをおすすめします。 作田 隆吉 オーナーズ株式会社 代表取締役社長
作田 隆吉