【事業売却】「税引後の売却対価」はいくら?個人・法人の「株式の譲渡所得」にかかる税金を計算
ミニマムタックス
令和5年度税制改正により、2025年から株式譲渡所得(いわゆるキャピタルゲイン)や土地建物の譲渡所得等を合計した多額の所得に追加課税がなされることになりました。通称「ミニマムタックス」といわれる制度で、一言でいえば超富裕層に対する課税強化を目的としたものです。新制度は2025年1月1日以降の株式譲渡所得等について適用されます。 前述のとおり、現行の株式譲渡所得に対する税率(除く復興特別所得税)は、所得税と住民税を合わせて20%です。一方、給与所得に係る税率は所得が高額になるほど税率が高くなる累進課税であり、所得4,000万円以上に適用される最高税率は、所得税と住民税をあわせて55%となっています。一般的に、高所得者になるほど所得に占める株式譲渡所得・不動産譲渡所得の割合が高く、高所得者の所得税負担率が低くなる傾向にあります。令和5年度の税制改正はこうした税負担の不公平を是正する目的で、所得が極めて高い納税者に追加の所得税負担を求めるものです。 ◆ミニマムタックス制度による追加納税 新制度における追加の所得税負担額は、おおむね次のように計算されます。 【(合計所得金額-3.3億円)×22.5%-通常の所得税額=追加納税額】 合計所得金額とは「株式の譲渡所得のみならず、土地建物の譲渡所得や給与・事業所得、その他の各種所得を合算した金額」のことです。ただし、スタートアップへの再投資やNISA関連の非課税所得は含まれません。 計算式中に「特別控除3.3億円」が含まれているところからわかるように、追加納税となるのは一定の所得金額以上の場合です。目安として、ほかに所得がなく株式譲渡所得が 10億円を超えるようなケースでは、納税負担が増加する可能性があります。 〈計算例:株式譲渡所得が10億円の場合における所得税計算〉 【ミニマムタックス適用前】10億円×15%(所得税率)=1億5,000万円 【ミニマムタックス適用後】(10億円-3.3億円)×22.5%=1億5,075万円 ⇒追加納税額:75万円 (※住民税は別途【10億円×5%=5,000万円】で、現行制度からの変更はありません。) 昨今、M&Aによる多額の株式譲渡所得が生じるケースも散見されます。一律 20%の税率と思っていると税引後手取り額が想定以上に少なくなることもありますので、事前に十分に検討したうえで株式譲渡を進めることが必要です。