「あなたに興味があります」新卒学生に大量スカウトメールを送る業者たち
● “リアル慣れ”と同時に ウェットな情報収集も大切 興味のある企業を見つけたら、積極的にOG・OB訪問をしたり、インターンシップに参加したりしよう。もちろん“リアル慣れ”することも理由の一つにあるが、公開されていないウェットな情報が得られるのが大きい。その際は、下図に示した六つのポイントを必ず聞こう。 どのような人材が求められているのかを把握し、エントリーシートや面接で語る自分の志望動機の補強に役立てられる。また「活躍する社員の傾向を探ることで、自分がその企業に適しているかを判断し、入社後のミスマッチを防ぐことにもつながる」(安藤氏)。 ここまで紹介してきた企業研究や自己分析を行っても、どうしても自分に向いている企業が分からない、やりたいことが見つからないと悩みを抱える学生も多いだろう。そんなときはダイレクトリクルーティングメディアが活用できる。 大学や専攻などの基本情報を登録しておくと、企業から「あなたに興味があります」とスカウトの連絡が届くサービスである。中途採用ではよくある手法だが、今や新卒採用の場にも普及している。 「学生は、どういった企業から自分は求められているのか分かり、就活を進める上で材料になる」(安藤氏) ただし、学歴で判断し、大量の学生にDMのように一斉にオファーを送るメディアがあることも事実。メディアが有名になればなるほどマス化して、個別化したオファーが少なくなる。そこで「登録企業数が少ないメディアを選ぶのがコツ」と安藤氏は語る。 企業と学生の登録数が少ないメディアの方が、学生一人ひとりを見たオファーになりやすい。就職したい業界や職種が決まっている学生は、それらに特化したエージェントを選ぶとよい。例えばIT業界ならば「paiza」や「Geekly」、未定ならば「OfferBox」や「キミスカ」などがある。
● 情報収集のやり方は 「企業規模」で変える 実は情報収集のやり方は企業規模によっても変わる。大企業の場合は独自に採用ページを制作するなどして情報が充実している。 だが発信されている情報は、対外的によく見せようとしているものが多い。「インターンシップや会社説明会だけでは実態がつかみにくいので、他の手段も講じて情報を追加収集することをお勧めする」(安藤氏) 一方、中小企業やベンチャー企業では、インターンシップの内容がより実務に即した実践的なものになりやすい。採用活動に大手ほど予算やマンパワーをかけられないため、就活用の特別なプログラムを作成しないことがあるからだ。 実際に1週間働いたり、商談に同行できたりすることもある。 「企業の商談は、扱う商材の金額に差こそあれ、中身に大きな違いはないので、商談というビジネスが動く生の現場を体験できるのは大きなメリットになる」(安藤氏) ベンチャー企業の場合は大企業出身者も多く、大企業の仕事の進め方も垣間見られるかもしれない。中小企業やベンチャー企業は無選考でインターンシップに参加できることも多い。申し込まない手はない。 就活では、並の情報収集では、周りと差が付かない。数ある情報から本当に役立つものを抽出し、自分の足で稼いで実態をつかむことが大切だ。 就活は今後、どんな人生を歩んでいくのかを考えたときのファーストステップでもある。「この機会に自分のキャリア全体を見通しておくことは、ぜひやっておいたほうがいい」と安藤氏。 キャリアの築き方は就職関連書籍を読むのがお勧めで、同氏が推薦する1冊は『働く人のためのキャリア・デザイン』(PHP新書)だ。 未来の予想が難しい時代において、自分に訪れたチャンスを捉え、うまく利用するキャリアドリフトの考え方も大事だが、就職のような節目では自分について振り返り、積極的にキャリアをデザインすることの重要性を紹介した内容だ。 ただし、こちらの書籍は2002年刊行のため、最新の新卒採用における実践的なポイントをまとめているのが、同氏の著書『あたらしい「自己分析」の教科書』(曽和利光監修、日本実業出版社)だ。自分の強みを見つけるためのポイントが詳しく解説されているので一読してみよう。
巴康子