元サッカー日本代表・槙野智章が、「いいプレイヤー」「いいリーダー」に共通して大事だと思う心構えは?
学ぶ姿勢を持ち続けることが大事
──槙野さんは2022シーズンをもって現役を引退し、さまざまなメディアで活躍しながら、並行して指導者としての道を歩み始めました。そんな中で「いいプレイヤー」「いいリーダー」になるために、どんな心構えをすることが大切だと考えていますか? 選手・監督業とフィールドが変わっても、学ぶ姿勢が大事だと思っています。だって、自分よりも優れた人は、どの世界にも絶対にいますから。 長らくプロサッカー選手としてプレーして、日本代表にも選ばれましたけど、僕は自分のことを“すごい”と思ったことがないんです。いや、正直に言うと、高校に進学するまでは「自分が一番うまい」思っていたかな(笑)。でも高校に進んでから、自分よりサッカーのうまい人間がたくさんいることを知って、大きな挫折を味わいました。世界は広いし、ステージが進めば、どこに行っても自分よりも優れた人間はいると知って、常に学ぶ姿勢を持ち続けることが大事だと思うようになりました。 一方で、オリジナリティも大切にしています。自分の新しい像を作るために、謙虚でありながら、いろんなことを見て、研究することが、プレイヤーであろうと、リーダーであろうと、自分の成長に繋がっていくことだと思います。
「5万人からのブーイング」が心を強くした
──現役時代の槙野さんは、チームを円滑にするムードメーカーという印象でした。どんなときでもブレない強靭なメンタリティの持ち主だと感じていましたが、その根っこには謙虚さがあるのですね。何かメンタル面でもトレーニングは行っていたのでしょうか? メンタルトレーナーはいましたけど、特別なトレーニングはしていないですね。意識して鍛えたというより、環境が心を強くしてくれました。だって、試合に負けたら5万人から大ブーイングを浴びるんですよ。勝ったら、勝ったで相手チームのサポーターからブーイングを受ける。自分がどうこうではなくて、環境が自然と強くさせてくれたんです。強靭にならざるを得なかったというか。そういう意味では特殊な職業だと思います。 ── 一般的には、人生を通しても5万人と会う機会すらないですもんね。 タフじゃないとやっていられない環境でした。気持ちが沈んでいたって明日はやってくるし、週末には試合が控えている──いつまでもクヨクヨしてはいられない状況が10年以上続きました。すごくポジティブに角度を変えていうなら、ずっと文句を言われ続ける人もなかなかいないんですよ。言われ続けるというのは、それだけ期待してくれている人がいることの裏返しだと思うんです。人は無視されるのが一番つらいですから。 ──たしかに。 実は僕、引退したあとに解説者としてスタジアムに行ってもブーイングされるんですよ(笑)。それで「なんでだよ」とリアクションをすると、みなさん笑ったあとに拍手をしてくれるという。ひとつのコミュニケーションになっているんですね。引退してもブーイングされる人はそうそういないので、ある意味でうれしいです。