結成11年目の4人組バンド・家主、新アルバムは「日常の出来事を成仏させたような曲が集まっている」
’60年代ロックとポップスの影響が色濃い芳醇なメロディとバンドアンサンブル。岸田繁さん (くるり) や草野マサムネさん (スピッツ) といった、メンバーが影響を受けたアーティストから称賛されるなど、にわかに注目を浴びているのが結成11年目の4人組バンド、家主だ。 メンバーみんな野心があまりないところが居心地がいい。 左から、谷江俊岳さん (Vo/Gt) 、田中悠平さん (Vo/Ba) 、田中ヤコブさん (Vo/Gt) 、岡本成央さん (Dr/Cho) 。 「くるりやスピッツの曲を食べて出した便みたいなものが家主の曲になっているので、その人たちがいなかったら今みたいな曲は作れてないと思います」 (田中ヤコブ) バンドの中心人物である田中ヤコブさんはソロアーティストやサポートギタリストとしても活躍している。 「ヤコブが作る曲はすごく多彩ですし、自分が作った曲もヤコブがアレンジすると想像以上に良くしてくれるんです」 (田中悠平) 2年ぶりの3rdアルバム『石のような自由』に対し、ヤコブさんは「自分の中にあるロックのイメージを具現化できた手応えはある」と口にする。ビートルズへのリスペクトを感じさせる1曲目「SHOZEN」の歌詞は同音異義語が多用されるなど、遊び心が溢れる。 「去年のツアー中、ずっとかぶっていた野球帽をなくしてしまったことが悲しすぎて生まれた曲で、しょんぼりした気持ちを成仏させたかった。日常のどうでもいい出来事が道端に落ちている石のように思えたことと、自分は声高にミュージシャンであることをアピールするタイプでもないということがリンクして、『石のような自由』というアルバムタイトルになりました。日常の出来事を成仏させたような曲が集まっているので、アルバムは焼き場みたいなものです」 (ヤコブ) 「なんでも歌詞にするよね」 (悠平) 「家主の曲を弾いているだけで楽しいです。ヤコブちゃん以外の3人は普段別の仕事をしているので、十分なリソースがバンドに割けていないんですが、それでもヤコブちゃんは許してくれるんです」 (谷江俊岳) 「メンバーみんな野心があまりないところが僕としては居心地がいいです。僕も新卒で会社に就職した時、細かい事務作業をやっていた経験があります。今は転職活動中なんですが、世の中が華やかではないということは理解できていますし、だからこそ一生活者としてのリアルを歌えるという自負があります」 (ヤコブ) 「自分としてはバンドが仕事になってしまうとバランスが保てなくなると思っています。月~金曜はバイトをすることで、バンドに寄りかからないようにしています」 (岡本成央) 「僕もそうですね。バンドで生活しなきゃいけなくなったら変に力が入ってしまう。一般人の目線を持っているのが家主の良さだと思います」 (悠平) 「なにしろ一般人だからね (笑)」 (谷江) 3rdアルバム『石のような自由』。先行配信の「SHOZEN」「きれいにおまかせ」「オープンエンド」、ライブで既に披露されている「ひとりひとり」やシングル「Dreamy」の新録版等、全11曲収録。¥2,800 (NEWFOLK) やぬし 谷江俊岳 (Vo/Gt) 、田中悠平 (Vo/Ba) 、田中ヤコブ (Vo/Gt) 、岡本成央 (Dr/Cho) 。ソロアーティスト/ギタリストの田中ヤコブを中心に、2013年結成。「YANUSHI LIVE TOUR 2024」が開催中。 ※『anan』2024年3月20日号より。写真・土佐麻理子 取材、文・小松香里 (by anan編集部)