“治療”続けて4千件 青森おもちゃ病院 「子どもたちの笑顔取り戻したい」ドクター奮闘
「足が急に動かなくなった」「手が折れてしまった」。不調を訴える患者が次々と運ばれてくる。ここは病院。だが、患者は全ておもちゃだ。壊れたり不具合を起こしたりした玩具を“治療”する青森おもちゃ病院(青森市)は2011年に誕生し、今月で治療4千件を超えた。50~80代の“ドクター”は無償のボランティア。「宝物を直して子どもたちの笑顔を取り戻したい」と工具を手に患者と向き合っている。 今月8日、同市のアピオあおもりには多くの家族連れが訪れ、大切なおもちゃを持ち込んでいた。高音が出なくなった小さなラッパ、踊れなくなったサンタクロース…。ドクターたちはおもちゃの元に集まり「分解して配線を見ていこうか」などと話し合いながら治療方針を決めていく。 おもちゃ病院は全国各地に広がり、県内では弘前市や八戸市、むつ市などにある。おもちゃを預かるドクターは養成講座を受け、はんだごてなど修理の基本技術や心得を学んだ後に病院勤務となる。 青森おもちゃ病院は月に一度(主に第1日曜)、アピオあおもりで開院。ドクター14人、受付担当2人の16人体制で運営する。定年退職後、第二の人生として始めた人が大半で、前職は教師、測量技師、IT機器メーカー勤務などさまざま。診察当日に直せない場合はドクターの自宅に“入院”して治療を継続。1カ月後の開院日に引き渡す。 院長を務める青森市の中村鉄男さん(76)は元臨床検査技師。プラモデル作りが趣味で、退職後の生きがいを求めておもちゃドクターの道を選んだ。「思い出の詰まったおもちゃを直して持ち主に返すと笑顔で受け取ってくれる。それが一番の喜び」。同病院の治癒率は8割。その半面、「直せなかった時は、たまらなく悔しい」と語る。 8日は4千件目の依頼人となった同市の花田敬子さん(40)が貯金箱を受け取りに家族と来院。箱の上に小銭を載せると中から人気キャラクターが顔をのぞかせ、手を伸ばして小銭を取り込むはずが、動かなくなり治療を依頼したという。田中定男ドクター(80)が内部のギアを交換するなどして対応。明るい曲に乗ってひょっこりと動く元通りの姿を見た花田さんの次女(11)は「壊れてしまって悲しかった。来年、お年玉をもらったらすぐにこの貯金箱に入れたい」と声を弾ませた。 同病院では修理費は基本無料で、部品交換が必要な場合は部品代(原則500円以内、上回る場合は要相談)が必要。入院費は別途100円。直せなかった場合、料金は求めない。次回は来年1月5日午前10時~正午にアピオあおもりで開く。 今後の開院日の問い合わせやドクター希望者は中村院長(080-3146-6098)へ。