自動的に部下のモチベーションを上げる管理職が「月1回」やっている意外な習慣
年収が上がらない、モチベーションが上がらない ── そんな悩める人たちに「圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化・ノウハウ化がすごい」と話題なのが、森武司著『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』だ。FIDIA(フィディア)の森社長は、吉本のお笑い芸人引退後、4年間の引きこもりニート、家電販売員を経て仲間と起業。現在年商146億円、Financial Times「アジア太平洋地域急成長企業ランキング 未上場日本一」、「ベストベンチャー100」受賞、経済産業省選定「地域未来牽引企業」、11事業すべて黒字化、新卒500人採用、創業以来18年連続増収増益を果たした。また、素人ながら化粧品開発に取り組み、あの資生堂を抜き、アマゾン年間売上1位となった注目の経営者でもある。 引きこもりニートだった著者が、なぜ、ここまでの人生大逆転を実現できたのか? その秘密はデビュー作で一挙公開した「仲間力アップマル秘マニュアル」の6大奥義にあるという。そこで今回は、本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。連載1回目は、「社員のモチベーションを自動的に上げるしくみ」について話を聞いた。(構成・川代紗生) ● 社員のモチベーションがグーンと上がる 管理職がやるべき「月1ルーティン」とは? ――『スタートアップ芸人』は、ビジネス書としても、一人の人間の成長譚としてもすごく面白くて勉強になるところがたくさんありました。よい人材をどう集めるか、まわりをどう巻き込んでいくか、という部分に、ここまでフォーカスした本も、あまりないのではと思います。 森武司(以下、森):はい、ありがとうございます。 ――特に驚いたのは、本書にあった、「社員のモチベーションを自動的に上げる」しくみについてです。毎月「組織図」を送る、と書かれていましたよね。 “僕らの会社で少し変わったしくみといえば、毎月一回、全社員にチャットワークを通じて組織図を送っていることかもしれない。(中略) すると、社員が組織全体を把握できるだけでなく、「早く課長になりたい」「将来は役員になりたい」という意識が生まれてきた。”(P147~148) ――たしかに、働いている側からすると、「組織図が毎月共有される」と、とても助かるしくみだなと思ったんです。取り入れたきっかけは何だったのですか? 森:大きく分けて、2つあります。 まず、僕らの会社「FIDIA(フィディア)」では11事業を行っており、複数事業を兼任している社員も多かったのです。 そうすると、 「どっちの上長に話を聞いたらいいですか?」 「僕って結局、どこの部署に所属していて、誰が上司なんですか?」 といった声が、部下たちから、ちょこちょこ上がってくるようになったんです。 複数部署に所属していると、自分のポジションがわかりにくい。 これはあんまりよくない、改善しないといけないという問題意識がありました。 あとは、「僕って、どうやったら昇進できます?」という質問を部下からもらったのもきっかけの一つです。 「役職の見える化」ができていたほうがモチベーションアップにつながりそうだなと思い、試しに、簡易的な組織図をつくってみたんです。社員に共有し、反応を見ていました。 すると、なんだか、それを見て楽しそうにしている社員が多いことに気がついたんです。 ● 「切磋琢磨しあうチーム」が自然と生まれるしくみ ――楽しそう……というのは、ワクワクしている様子が伝わってくるイメージでしょうか。 森:そうなんですよ。みんなニヤニヤしながら、組織図をスマホの画面に映して、僕に見せてくるんです。 「僕が役員になったら、部下がこんなにいっぱいいるんですね」「〇〇部署って、あらためて見るとやっぱり大きいですね」とか。 特に、組織図を送ってから2日くらいは、かなり盛り上がっていましたね。 それと、いい意味で他部署へのライバル意識が掻き立てられる部分もあるのかなと思います。 「××部って、まだ30人しかいないけど、売上こんなにいってるんですか。すごいですね!」など、刺激を受けた社員もいたようです。 組織図をテーマに雑談したり、それをネタにランチで盛り上がったりするところもよく見かけますね。 ――組織全体を俯瞰して見られるから、「経営者的視点」も身につきそうですよね。 森:サッカーの試合を観るときに、「自分が監督だったらどうするか?」と妄想するのは楽しいじゃないですか。 チームを見て、この人、フォワードにしたら強そうだなとか、この人はレギュラーにしておきたいなとか。 その感覚と似ている部分があります。 いろいろなことが見える化できると、監督気分でまるでゲームのように、「俺がつくる最強組織」を妄想することができる。 この部署はちょっと営業力が弱いから、もう少し人を増やさないといけないとか、社員たちが好き好きに話し合っているのをよく見かけます。 ● ビジネス立ち上げ時には「理想の組織図」をつくる 森:「理想の組織図」をつくる、というのもよくやりますね。 ――理想の組織図? 森:新規事業を立ち上げるときに、よくやる方法です。 新しいビジネスがスタートするとき、だいたい3~5人くらいの小さなチームで始めるのですが、「僕らのチームが大きくなったら」と仮定し、「理想の組織図」をつくっておくんです。組織図をつくるための合宿をすることもあります。 ――組織図をつくるための「合宿」! 森:それこそ監督気分で、「こういう能力のある人がいたら勝てる」と、みんなであれこれ妄想しながら。社内にいれば、その人をチームに入れようとなりますし、いなければ、他社からヘッドハントしようという話も出ます。 ● 「この仕事、私がやりましょうか?」 仕事を率先してやる空気が醸成された理由 森:それから、組織図を共有するメリットがもう一つあるんです。 「この仕事、自分がやっていいですか?」 と手を挙げやすくなることです。 先ほど触れたように、「FIDIA」には11事業あるので、たくさん仕事を抱えてしまう人もいます。多いときは、1人で7事業の責任者を担当していることもあったりして。 ――それは大変ですね。でも、組織図が共有されると、「Aさん、仕事抱すぎじゃない?」など、状況をみんなが把握できるということですか? 森:そうなんです。「Aさん大変そうだから、この役割、自分がもらいますよ」と言い出しやすい。 もし、自分が前々からチャレンジしてみたい業務が人手不足だとわかったら、「今こそチャンス!」とばかりに遠慮なく手を挙げられます。 組織図があることで、自分がやりたい仕事をつかみにいくチャンスを見極めやすい。 これも、社員のモチベーションアップにつながる要因の一つかもしれません。 『スタートアップ芸人』にも書きましたが、組織図を送信するだけでなく、昇進した人を赤字で表示したり、見出しに「〇〇さんが課長に昇進しました」と書いたりしています。 すると、チャットワークのリアクション機能を使って、みんなから「いいね」「おめでとう」といった声が届いたりします。 ――なるほど……! 「組織図を共有する」というシンプルなしくみだけで、ここまで社内の空気がガラッと変わるなんて、すごいです! 森:まとめると、組織図を共有する効果としては、 ・みんなが昇進を称え合うことで喜びが共有され、自分も昇進したいという前向きな気持ちになる ・「どうしたら昇進できるか」「昇進したらどうなるか」などキャリアルートが見えやすい ・どういう人材を探せばいいかの指標になる ・まわりに助けを求めやすい ・「この仕事をやりたい」と手を挙げやすい ・社内の雑談のネタになる などなど、いいことづくしです。 他にも、「社員のモチベーションを自動的に上げる」しくみについては、いろいろと工夫してきました。『スタートアップ芸人』にまとめているので、チームづくりで悩んでいる管理職、リーダー職の方に、参考にしていただけたらとても嬉しいですね。
森 武司