松岡功祐、母校・明治大学にコーチとして凱旋。"人間力"を備えた選手たちを毎年プロに送り込んだ5年間
「キャッチャー出身ということもあって、ピッチャーを見る目がすごい。ピッチャーの短所を矯正させたら、善波監督以上の人はいない。天下一品です。柳裕也(中日ドラゴンズ)にはピッチングの時にある癖が出ていたんですが、すぐに直しましたからね」 明治大学の選手は2010年以降、15年連続でドラフト指名を受けている。2014年からは5年続けてドラフト1位だった(2014年:山崎福也・バファローズ 2015年:高山俊・タイガース、上原健太・ファイターズ 2016年:柳裕也。ドラゴンズ 2017年:齊藤大将・ライオンズ)。糸原や福田のように社会人野球を経由してプロ野球選手になった選手もいる。 リーグ戦で何度も優勝し、プロ野球に選手を送り込む――これができたのは善波監督の眼力、松岡の指導力があったからだ。しかし、どれだけ高評価を得てプロ野球選手になっても、全員が全員、成功するわけではない。 「みんな、それぞれにいいものを持っていますが、プロ野球の世界に入ったらあとは性格勝負だと思います。長いシーズン、調子がいい時も悪い時もある。だから、性格の暗い選手はダメですよ」 松岡が見るところ、明るい選手のほうが壁を乗り越える可能性が高い。 「なかには、ものごとを悪いほうに悪いほうに考える選手がいます。プロになればできて当たり前だから、褒められることなんかめったにない。その分、気持ちは明るくいかないと。長嶋茂雄さんなんか、いつも底抜けに明るかったじゃないですか(笑)」 ■成功するために必要な「好かれる力」 ドラフト指名を受けてプロ野球に入る選手たちは、基本的に球団を選ぶことはできない。希望球団に入れたとしても、監督、コーチは数年で交代することがある。 「いいコーチに巡り合えるかどうか。これはひとつの縁だし、運です。カープの新井貴浩監督がプロ入りした時、大下剛史コーチに鍛えられた。監督やコーチに好かれない選手は試合に使ってもらえません。使ってもらえなければ実力を発揮することは難しい。『100回失敗しても使うぞ』と言われれば頑張りますよね」 指導者にも「好かれる力」が必要だと松岡は言う。 「信用してくれる人がいて後ろ盾があれば、思い切ってプレーできます。これは大事なことです。僕の場合、三原脩さんに言われた『松ちゃんは実戦向きだからな』のひと言で、自分の長所を見失うことなく、頑張ることができました。指導者の言葉は大きな力を持っています」 自身の経験から、松岡は自分から選手に近づいていくことにしている。