スター不在?!年末格闘技に本当に見たい試合はあるのか
今年も年末にテレビ局主導の大型の格闘技イベントが開催される。 フジテレビ系は、元PRIDEのスタッフが立ち上げた『RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2016 無差別級トーナメント」を 2年連続で放映。大会そのものは29日、31日の2日間にわたってさいたまスーパーアリーナで行われ、無差別級トーナメントだけでなく、女子格闘技の試合あり、小池栄子の旦那の出陣ありの盛りだくさんのラインナップ。対抗するTBS系は、「KYOKUGEN2016」という番組内で、元K-1王者の“反逆のカリスマ”魔娑斗(37)が現役のUFC戦士で元PRIDE王者の“火の玉ファイター”五味隆典(38)と対戦する。 昨年の大晦日決戦では、TBS系は、魔娑斗vs山本“KID”徳郁のカードで視聴率9%を稼ぎ、一方、RIZINは7.3%だったが、両局共に“打倒紅白”を掲げ、系列番組を使い大晦日イベントを盛り上げようと懸命だ。 だが、悲しいかな、スター不在で、社会を巻き込むような話題にはなっていない。大晦日の格闘技といえば、過去に大相撲から転向した曙vsボブ・サップ戦や、K-1vsPRIDEの対抗戦、大物プロレスラーの参戦や、タレントのボビー・オロゴンをリングに上げるなど、次から次へとあっと驚くビッグカードを仕掛けてきたが、今回の大晦日カードは話題性には乏しい。 RIZINの方は、当初、目玉に考えていたリオ五輪銀メダリストの国民栄誉賞レスラーの女王、吉田沙保里を担ぎだすことができずに、ヴァンダレイ・シウバvsミルコ・クロコップという往年の名カードも、シウバの欠場で消滅。元UFCヘビー級王者の参戦としてコアなファンの注目を集めていたシェーン・カーウィンも、親権を巡る離婚裁判による準備不足を理由に欠場、そしてミスター女子プロレス、神取忍vsブラジルの怪女、ギャビ・ガルシアという、榊原実行委員長が「最も視聴率が出るのではないか」と期待を寄せていた異色カードも、神取の練習中の怪我を理由に流れ、代役として同じく女子プロレスラーの堀田祐美子が出場することになった。49歳。知名度で言っても“元国会議員”神取に比べるとガクンとトーンダウンした。 UFCとの契約を蹴って参戦した川尻達也と、グレイシー一族、クロン・グレイシーのカードは、魅力があるが、川尻も38歳で、あくまでもコアな格闘ファン向き。元DREAM王者の所英男と山本美優の息子である山本アーセンとの対戦も然り。ドラマ仕立てにしているのが、タレント、小池栄子の旦那であるプロレスラー、坂田亘と元修斗王者の桜井“マッハ”速人の対戦だけではいかにも苦しい。 昨年は、2日間行われたRIZINの地上波放送も、今回は大晦日だけになり規模が縮小した(スカパーでは両日生放送され、フジ系の大晦日の放送時間は伸びたが)。 週刊ファイト編集長で、辛辣な意見や独自情報の発信で、格闘業界内に、いつも賛否を交えた波紋を投げかけているタダシ☆タナカさんも厳しい指摘をする。 「RIZINは、欠場、欠場でゴタゴタばかりが目立ってしまった。世界規模で見るとUFCが雲の上の存在としてあって、次の位置の格闘団体としてはベラトールがあり、RIZINの今回のカードや出場選手の顔ぶれを見る限り、RIZINはまだその世界との格差を埋めきれていない。榊原実行委員長も怒っていたが、カーウィンの欠場理由なども、舐められている証拠。スパイクTVという全米での局での放送も今回はなくなったし、ヒョードルも、来年2月にそのべラトールに参戦することで出場できなかった。 ただ、そのベラトールの王者で昨年のRIZIN無差別級王者だったキング・モーが出てくるのは朗報だ。シウバ対ミルコよりも、このモー対ミルコの方が面白い。また魔娑斗と五味の試合は、エキシビションの範疇になるのかもしれないが、この試合に向けてトレーニングを積んできた真剣勝負。昨年の魔娑斗対KIDの試合も批判を受けていたが、そこの部分だけはファンには勘違いしないでもらいたい。局の意向で、お茶の間の誰もが知っているライト層を意識した選手を出すとなれば、魔娑斗に声がかかるのが現状なのだ。そこに格闘界が置かれた問題があるのだが、昨年の大晦日の流れから、今年は地上波でパンクラスの生放送があったり、AbemaTVが格闘技中継を始め、“ノックアウト”というキックのイベントが立ち上がって盛り上がるなど本当に徐々にだが復活の兆しはあると思う」