『ライオンの隠れ家』松本Pに聞くキャスティング秘話 「柳楽さんだからこそ成立した作品」
美路人役は企画段階から「今回の役は坂東さんだ!」
ーー自閉スペクトラム症の美路人を演じる坂東龍汰さんにも称賛が集まっています。 松本:坂東さんとご一緒するのは本作が3回目となります。その演技の素晴らしさはこれまで知っていたのですが、障害を持った役柄を演じたある作品のインタビュー記事で、熱心に勉強をされて、敬意を持ってその人自身になりきれる方なんだなと改めて感じたんです。なので、本作の企画書を作り、自閉スペクトラム症の弟と決めたときには、「今回の役は坂東さんだ!」と思っていました。自閉スペクトラム症については、その道の権威と言われている本田秀夫先生の本を読んだり、さまざまな関連映像を見たり、今回監修に入っていただいているさくらんぼ教室にも何度も通って勉強してきました。スタッフはいつでも勉強できる体制を組み、そこに坂東さんも加わり、足繁く通いながらコミュニケーションを取っていきました。坂東さんからも自閉スペクトラム症を扱っている作品を勧めてくれたり、勉強をし続けてくれていて。それをまた柳楽さんにも共有されて、『ライオンの隠れ家』では何ができるのか、とみんなで話し合いながら作り上げています。 ーー小森家のヒューマンドラマに癒やされるとともに、サスペンス部分も秀逸です。何か参考にした作品などは? 松本:具体的に意識した作品はないのですが、これまでのTBS金曜ドラマの伝統といいますか、『最愛』や直近でいうと『笑うマトリョーシカ』と同じように、視聴者の方々が夢中になってくれるサスペンス要素はうまく絡めることができればと考えていました。強いて作品を挙げるとすると、例えば坂元裕二さん脚本、是枝裕和監督『怪物』のような森林を走る2人の男の子のようなビジュアルに近いイメージは漠然とありました。 ーーヒューマンドラマとして、サスペンスドラマとして本作が見逃せない理由が改めてわかりました。最後に後半に向けてメッセージをお願いします。 松本:サスペンス要素も本作の魅力ではあるのですが、根底にあるのはヒューマンドラマの部分です。小森兄弟とライオンが、この後どう成長・変化していくのか。彼らの家族愛の温かさに癒やされていただきつつ、サスペンス部分もどう展開してくか注目していただければうれしいです。
石井達也