【年末年始に見たい映画】ベルリン国際映画祭受賞作!『太陽と桃の歌』
発見、感動、思索……知的好奇心を刺激する、映画好きな大人のための今月の新作を厳選! いま見るべき新作映画3選
桃農園を営む大家族を舞台に、自然と人間の在り方を見つめるベルリン国際映画祭受賞作『太陽と桃の歌』
スペインのカタルーニャにある小さな村で、ソレ家は祖父の代から桃農家を営んでいる。祖父と大伯母、長男キメット夫婦と息子と娘、キメットの妹夫婦と大家族総出で働いてきた。そんな桃畑にはキメットの幼い末娘と従兄弟の双子の笑い声が溢れる。ところが収穫期を迎えたある日、彼らは地主から一帯にソーラーパネルを設置するという理由で、土地の返還を求められる。土地は祖父が仲の良かった先代から口約束だけで借り受けていたため、なす術もなかった。 いきなり未来が絶たれた不安と憤りによって家族がギクシャクし、共に食卓を囲み、ともに働いてきた大家族に危機が訪れる。怒りの収まらない父を支えようと、高校生の息子は収穫に精を出すが、「勉強の方に身を入れろ」とそっけない父の態度には農業の将来に抱く不安ものぞく。そんなひとりひとりの心の揺れをとらえながら、大切に育ててきた桃の最後の収穫に向かうソレ家の夏の物語が映し出される。 本作は第72回ベルリン国際映画祭コンペティション部門で、最高位の金熊賞を受賞した。
日本の農業の苦境や、緑の森や畑を黒々と覆い尽くすソーラーパネルの問題とも重なるところの多い本作を監督し、ベルリン国際映画祭金熊賞に輝いたのは、自身の家族もこのカタルーニャで桃農家を営んでいるというスペインのカルラ・シモン。そんな彼女の伝統的な農業と農家、そして桃の木々への愛情が、土地とアイデンティティを失いかけた厳しい状況にも陽の光を注ぎ込む。 (画像)大家族の群像を見事に演じたキャストのほとんどは、農作業の動きと農業への切実な思いが体に染み込んだ地元カタルーニャの演技未経験者から選ばれた 『太陽と桃の歌』 全国上映中 BY REIKO KUBO