金星探査機「あかつき」の観測成果 JAXA会見(全文1)未知の物質が太陽光を吸収
アルベドの高低で吸収の度合いが変化
Lee:このように今回、10年ぐらいのデータの中で、最初のほうではアルベドが比較的高くなっていると。このときは反射率が高いので、要はやってくる太陽光のうちの多くを宇宙空間に跳ね返してしまって、そのわずかな残りだけを吸収するということになります。そうすると、大気が太陽光によって加熱される割合が小さくなります。 一方で、だんだん年がたって、アルベドが低くなってくると、今度は反射率が下がるということは、それだけ太陽の光をよく吸収しますので、大気が太陽光によってより強く加熱されるということになります。そのあとまた時間がたつと、今度は「あかつき」の観測になりますけども、またアルベドが大きく上がっていって、反射率が上がりますので、また大気の加熱が小さくなるという、そういった時間変化が見て取れます。 こちらは金星の大気中で、高さ方向に大気を加熱する割合がどのように変化しているか、高さによってどのように違うか、またその変化の仕方がアルベドが高いとき、アルベドが低いときでどのように違うかということを、これ計算して示した図になります。横軸は1日当たり、この加熱によって何度ぐらい温度が上がったり下がったりするだろうというかといったことを表していまして、これを見ると、アルベドが高いとき低いときで、大気を加熱する割合が、高度65キロぐらいを中心に2倍ぐらい変化するということが分かります。 これは金星の大気の数値シミュレーション、計算機シミュレーションにおいて、太陽光による大気の加熱の大きさをわざと時間とともに減らしていった、少なくしていったシミュレーションです。そうしますと、大気の温度が下がり、また、風がどんどん弱くなっていくということが理論的にも裏付けられたということになります。
反射率が変化する要因は未解明
まさにこの時期に「あかつき」や、ヨーロッパのVenus Expressの観測によって、長期的に金星の風が弱くなり続けているということが分かって、弱くなってきているということが、すいません、間違えましたね。今回お見せした期間の、前半のVenus Expressが観測していた時期には風速がどんどん強くなっていると。一方でそのあと、後半は風速が逆に「あかつき」の観測期間にかけて弱くなっていると。この変化はまさに今お見せした数値シミュレーション、計算機シミュレーションによる予想とよく合っているということになります。 このように、アルベドが高いとき、低いときに大気の加熱の変化を通じて風の変化も起こるということが明らかになりました。このように、反射率がそもそも変化する理由となるといろいろ考えられるのですけれども、ここに書いてあるような要因ですね、外的な要因もあれば内部要因もある。これに関してはまだ決着がつかないところであります。 このような金星の反射率の変化を通じた大気の状態の変化というものが示されたわけですが、さらに詳しいことを調べるために、今後はJAXAとヨーロッパ宇宙機関で共同でやっております、水星探査機BepiColomboが金星のすぐ近くを通過して観測するというような機会もありますので、こういった機会も生かしながら、調査をさらに進めていこうと考えております。以上です。ありがとうございます。 中村:じゃあ続いて、神山くん。 【書き起こし】金星探査機「あかつき」の観測成果 JAXA会見 全文2に続く