「今季がラストイヤーと決めていた」 森脇良太 引退決断の理由とは?
プロとしての現役生活は実に20年。いかなる時も前向きなマインドと暑苦しいほどの情熱をもって駆け抜けた男は、輝かしいキャリアについにピリオドを打つ。 9月2日、愛媛FCは森脇良太の今季限りでの現役引退を発表した。 渡り歩いたJリーグクラブで数々の劇的なドラマを演じ、あらゆるチームタイトル獲得の瞬間に中心選手として立ち会ってきた“レジェンド”の引退発表には、彼が所属したクラブのファン、サポーターだけでなく、多くのサッカーファンが惜しむ声を上げた。 なぜ森脇はピッチを去る決断をしたのか? 本人の口からその理由が明かされた。(松本隆志) 今年38歳を迎えた森脇の“その時”がそう遠くない未来に迫っていることは多くの人が覚悟していたはずだ。 かつてはJ1の舞台で優勝争いを繰り広げるチームの中軸として活躍し、大観衆で沸くピッチで情熱をたぎらせていた森脇も、近年は活躍の舞台をJ2、J3へと落としながら出場機会も徐々に減少。どの選手にもいずれやって来る衰えが森脇にも訪れていたことは誰の目にもごまかせないものとなっていた。 徐々に近づいてきていた“引退”の二文字。 ファンの期待に応えたくても体が動かない。「0か100か」がモットーの森脇にとって、全力プレーのできないもどかしさは自身を大いに悩ませていた。 底抜けに明るいいつもとは異なる抑えたトーンで森脇は静かに口を開いた。 「正直なところ、今季が始まるときに今年がラストイヤーになると9割くらいは決めていた。よほど気持ちに大きな変化がない限りは今季をラストにしようと。本当は体や気持ちが持てば40歳までやりたいと思ったけど、残念ながら自分の体と相談したときに、そこまでプロフェッショナルとしてプレーできる体力は残っていないと感じた。だから今季がラストなんだと決断した」 気力はまだあった。しかし、体が限界を迎えていた。とりわけ、かつて負った古傷の影響は大きく、プレーの強度を上げれば激しいリバウンドが押し寄せ、前向きな気持ちとは裏腹に体はプレーすることを拒んだ。 「痛みは5、6年前からずっとあった。もちろんメンテナンスはしていくんだけど、それも追いつかなくなってきた。 パーフェクトな練習ができたとしても、また痛さが出てきてそれが続かない。自分の性格的にもピッチに入ったら100%でやる。それを隠しながら、『今日は70%しか出せない』と感じてしまう自分が許せなかった」 森脇の現役生活のゴールはあくまでも今季最終戦。その信念のもと、全力で燃やし続けてきた選手としての生き様を見届ける舞台はまだ残されている。 「ここまで何一つ悔いのないサッカー人生を歩ませてもらったけど、愛媛ではまだやり残した思いがあるし、ここにいる素晴らしい仲間とチャンスをつかみ取りに行きたい。みんなとサッカーができることはものすごく楽しいことだけど、楽しいだけで終わらせたくはない」
愛媛新聞社