首位の千葉ロッテはなぜ強いのか
リーグトップの防御率3.38が示すように先発陣も充実している。 引っ張っているのは4勝0敗のエース涌井だが、実は落合投手コーチが裏エースに指名していたのが、今日、19日のソフトバンク戦で先発復帰する石川だった。 「いいピッチングをしながら、ひとつのミスでやられるパターンが、昨年までの石川。そこが消えれば、彼で貯金を作れる。去年は12勝12敗だったが、一気に負けが減る可能性がある」と、落合投手コーチはあえて第二カードの頭に置いた裏エースに期待を寄せる。 ソフトバンクから移籍のスタンリッジに計算が立ち、大嶺も1本立ちした。気楽な中継ぎの場面では、とんでもないボールを投げるが、先発や緊張した局面では力を出せなかった石垣島出身の未完の大器を一皮むけさせたのも、また“落合マジック”だった。 「先発にさせるのはこっちの勝手なんだから、駄目なら責任を取るのはおまえでなく俺」。そう言って重圧に弱い大嶺のケツを叩いた。結果が出るとそれが自信に変わり、ポジティブなスパイラルに変わる。 「ようやく大嶺に欲が出てきた。気持ちが弱かったが、今は自信に変わっている」。悪いなりにゲームは作って、ここまで1勝1敗だ。 そして5人目の先発としてプロ初勝利を1失点完投勝利で飾った二木の存在がある。落合投手コーチが、そのピッチングスタイルが似ているため、マリナーズで活躍している岩隈の姿と重ね、「岩隈のようになれ!」と、号令を飛ばす3年目だ。
ロッテの強さの理由は、投手力だけではない。評論家の池田親興氏は、「積極的に盗塁、エンドランを仕掛けて足を使うし、チーム内に競争力を養い、好調な選手をうまくやりくりしている伊東監督の手腕も見逃せない。ソフトバンクが最も苦手とするチームとしてロッテの名前を挙げるのも、そういう点だろう」という。 クルーズ、今江の抜けた穴をどう埋めるかが最大の課題だったが、“クルーズ、今江ロス”どころか、伊東監督は、その穴をうまくチーム内競争に使った。 開幕前から1番打者を巡る岡田、荻野らの競争があり、三塁のポジションは細谷と高濱、一塁のポジションも“アジャ”井上と、ベテラン井口が争う。キャッチャーもそうだ。開幕直前にインフルにかかった田村は、あっさりと開幕スタメンのマスクを吉田に取られた。 11年目の細谷は、一時期、ベストテンのトップにランクされていた。そのチーム内競争に、今度はナバーロが加わる。ナバーロは二塁で起用される予定で、そうなると押し出されるのは中村。ナバーロは内野ならどこでもできるため、調子のいい選手がその競争を生き残ることになる。17日の日ハム戦では、三木、高濱という脇役の活躍で連敗を止めているが、伊東監督は、こう言った。 「今は、ナバーロがくることで、(居場所のなくなるかもしれない)脇役が目の色をかえている。意外なナバーロ効果だよ」。 こういうチーム内競争は、間違いなくチームを活性化する。 打線をつなぐための選手を見極める能力と、ゲームの中でのあの手この手の采配については、伊東監督がおそらく現在のパ・リーグの監督の中ではナンバーワンだろう。チーム本塁打14はリーグトップで、盗塁16はソフトバンクに次ぐ2位。前の走者だけでなく、後ろの走者にも、ひとつ前の塁を意識させる走塁も光る。 好調理由を探っていくと、ロッテの快進撃は単なる春の珍事でないことがよくわかる。 今日からソフトバンクと首位攻防戦。ロッテの勢いが本物かどうかを占う重要な3連戦となる。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)