飛び級U-20代表選出の15歳久保が3つの誓い
二つ目の誓いは、サッカーをはじめたころから思い描いてきた、壮大な夢を成就させるための第一歩とすることだ。自身の将来像について、久保はこの日もいつもと同じ言葉を口にした。 「日本を代表するような選手だけでなく、世界でもトップレベルでの選手になりたい」 クラブの国際規定違反によるあおりを受ける形で、志半ばで帰国を選択せざるを得なかったスペインの名門バルセロナの下部組織での挑戦の日々もその一環。ディエゴ・マラドーナやリオネル・メッシをはじめとするスーパースターが、世界へその名前を知らしめた舞台へ。これくらいのプレーができれば、という基準をあえて設けないと久保は明かす。 「基準を作ってしまうと、それよりも上に行けることがあまり少ないというか。上の基準は作らずに、最低限、みんなが見ていて『楽しい』と思えるようなプレーを見せて、チームの勝利に貢献したい。一つ、二つ上の世代とは明らかにスピードやフィジカルの差はありますけど、自分にも彼らと互角以上に戦えるものが少なからずあって、呼ばれていると思っているので」 ならば、周囲を楽しませるプレーとは何なのか。幼いころから大好きで、上のさらに上のレベルを見すえながら、いまも日々練習を怠らないドリブルに久保は15歳の矜持を込める。 「相手にボールを取られないことが大前提で、なおかつ相手が嫌がるドリブルができればと思っています。パスや視野の広さなどでも、誰が見ても『あっ、すごいな』というプレーを何度か出せたら。あとはゴールも決められたら、そこも」
最後の三つ目の誓いは、自身を支えてくれる周囲へ、プレーを通して感謝の思いを伝えることだ。「もともと自分は小さなイメージがあった」と認める久保だが、この1年間で身長は約7センチ伸びて170センチとなり、体重も約5キロ増の63キロと「強さ」も身にまといはじめた。 「両親が、特に母親が食生活に本当に気を使ってくれて。まだまだ足りないんですけど、少しずつ食べる量も増やしています。両親には本当に感謝しいています」 両親だけではない。スペインから帰国した2015年5月から所属するFC東京は周到な育成計画を練り、今シーズンからはU‐18チームに所属したまま、チャレンジの舞台をJ3で戦うU‐23チームにステップアップ。4月15日のセレッソ大阪U‐23戦では、歴代最年少となる15歳10ヶ月11日でのゴールをゲット。待望の初ゴールに、久保自身をして「プレッシャーから解放されました」と言わしめた。 そして、途中出場が濃厚ながら、トップチームの一員としてYBCルヴァンカップの舞台に立つ扉も開けてくれた。先月28日からトップチームの練習に本格的に合流している久保のパフォーマンスを、トップチームの篠田善之監督も「技術と戦術眼の高さはトップチームでも通用する」と期待を込める。 「あれだけ若くて、あれだけの落ち着きがあれば周囲の選手たちも反応する。特に同じポジションの選手には気になる、刺激になる存在だと思う」 U‐20日本代表は11日から合宿を開始。グループDで21日に南アフリカ、24日にウルグアイ、27日にはイタリアと対戦する。いずれも強豪国ばかりだが、久保は臆さない。 「出場するからには優勝が一番の目標。そのためには、どのチームも倒さなきゃいけないので」 男子のすべてのカテゴリーを通じて、日本勢で初となる世界一を目指して。青写真通りに進めば準々決勝当日もしくは翌日に、将来の日本を背負うホープは韓国の地で16歳になる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)