「チェアマン」川淵三郎の知られざる一面 サッカー、なでしこ、バスケットボール、変革を続けた日本の平成スポーツ史の裏側
「日本」を変えた男
Jリーグは30年余の歴史を積み重ねてきたが、川淵が歴史の重みを感じるのは、全国に広がったクラブ数だ。10チームでスタートし、2023年シーズンにはJ3まで含め60チームに達した。 サッカーのプロ化が、当初は国際競技力向上のための手段として捉えられがちだったが、時代を経てみると日本のスポーツ文化を花開かせる壮大な実験であったことも理解できる。23年の文化勲章受章は、まさにその功績に対するご褒美と言えるだろう。 30数年前、川淵のような剛腕がサッカー改革に乗り出さなかったら、日本サッカーは今頃どうなっていたのだろう。川淵に代わるリーダーが率いて現在のようなプロリーグが誕生し、ファンの心をつかんでいただろうか。 歴史の「if」に正答を求めようがないが、本書のサブタイトルにある「日本のスポーツ界を変えた男」は、まさに川淵にふさわしい形容であり、変えたのはスポーツに限らず、「日本」そのものだったのかもしれない。
中島章隆