マ・ドンソクだから許される!?暴力ギャグの数々…不謹慎だけどユーモラスな『犯罪都市』のおもしろポイント
”マブリー”の愛称で親しまれる人気俳優マ・ドンソクが主演を務める実録クライムアクション「犯罪都市」シリーズ。2017年にスタートし、早くも第4弾となる『犯罪都市 PUNISHMENT』が9月27日(金)より公開される。 【写真を見る】マ・ドンソクのチャーミングな魅力が笑いを誘う「犯罪都市」シリーズ(『犯罪都市 NO WAY OUT』) このシリーズといえば、コワモテ刑事のマ・ソクトが拳一つで凶悪犯を成敗していく武闘派アクションが最大の持ち味だが、自慢の腕力をギャグとして描くなど作品を重ねるごとにエスカレートしていくコミカルな要素もポイント。最新作でも炸裂するコメディとしての魅力を、過去作を含めて振り返っていきたい。 ■怖すぎる“真実の部屋”…不謹慎だけど笑っちゃう取り調べギャグ 2004年に実際に起きた事件を基にソウルの加里峰洞を仕切る地元ヤクザと中国からやって来たチャイニーズマフィアの抗争を描く1作目『犯罪都市』(17)。まだ硬派な雰囲気が強い本作だが、「フフッ」と笑ってしまうシーンも随所に散りばめられている。 その一つがソクトが小悪党を取り調べるシーン。なかなか口を割らないチンピラに手を焼くソクトは「“真実の部屋”へ」と告げると監視カメラの死角に移動し、チンピラをバイクヘルメット越しに思いっきりグーパンチ。その様子を見ていたほかのチンピラが怯えるのに対し、日常茶飯事だとばかりに平然としている刑事たちのギャップが恐ろしくもおかしい。 監視カメラを隠して犯罪者を脅す“真実の部屋”は、シリーズを重ねるごとに鉄板ギャグ化。ベトナムを舞台にした2作目『犯罪都市 THE ROUNDUP』(22)では、「1つなくても平気だろ」と恐ろしいことを言いながら耳を引き千切ろうとしたり、チンピラの顔を押さえ込んだ机を全力で叩いて鼓膜を刺激したりと不気味な微笑みを浮かべながらやりたい放題。ほかの部屋の職員が「工事かな?」とこぼすほどの轟音で口を割らせたあとに申し訳程度に頭をポンポンする、下手くそすぎる“アメとムチ”には観ているこっちもニッコニコだ。 韓国で暗躍する日本のヤクザ絡みの麻薬事件を描いた3作目『犯罪都市 NO WAY OUT』(23)では、このシーンがさらに進化。ソクトの「“真実の部屋”をきれいにするぞ」の一言に部下たちが一斉に掃除を開始。監視カメラを拭き終わった瞬間にはチンピラがのびている様子が、監視カメラ越しに鮮やかに映しだされた。 このほかにも、1作目では「弁護士を呼びたい」と言う凶悪犯に「弁護士の“スタンさん”だ」と言いながらスタンガンを当てたりと、悪を成敗するためなら手段を選ばないソクトというキャラクターをお茶目に表現する取り調べシーンは人気のポイントだ。 ■不憫にすら思える小悪党たちの笑える活躍 そんな狂犬ソクトに恐れ慄くチンピラたちの小物感あふれるキャラクター像も本作のコミカルなポイント。一度でもソクトに痛い目に遭わされた犯罪者たちは情報源や資金源として使われており、ソクトの前では借りてきた猫のようにおとなしくなるなど、一方的な力関係が垣間見えるやりとりに笑わされてしまう。 そんな小悪党の代表格が、1作目でマフィア抗争の渦中にいる弱小ヤクザ、イス組のボスとして初登場して以降、シリーズ皆勤賞のチャン・イス(パク・ジファン)。ソクトにいいように利用されており、聞き込みのついでに昼食を横取りされたり、屋台飯を奢らされたりと、せこい商売に目を瞑ってもらう代わりにパシられ放題。 『犯罪都市 THE ROUNDUP』では、密航者に職を斡旋する仕事に鞍替えしていたところを見つかると、睾丸を鷲掴みにしながら「情報をよこせ」と脅してくるソクトに屈し、捜査に協力するハメに。ラストではどさくさに紛れて身代金を持ち逃げしようとするも、お見通しのソクトに指名手配されあえなく断念するなど、振り回されるだけ振り回され意気消沈。コミカルな存在として数々の笑いを提供してくれた。 ■交通事故レベルの破壊力を誇るマブリーの怪力を生かしたギャグの数々 作品を重ねるごとにエクストリーム度がアップしている「犯罪都市」シリーズだが、最も顕著なのがソクトから繰りだされる怪力の数々。『犯罪都市 THE ROUNDUP』のラスト、凶悪犯のカン(ソン・ソック)をバスの中でぶちのめすシーンでは座席ごとカンを蹴り飛ばしたり、フロントガラスに投げ飛ばしたりと、交通事故レベルの描写でソクトの圧倒的なパワーが表現された。 さらに『犯罪都市 NO WAY OUT』ではクラブセキュリティの大男が拳一発で沈められ、直立不動のまま床に突っ伏す様子をローアングルからのカットでコミカルに映しだしたり、ソクトの腰の入ったパンチを食らった敵がショットガンで撃たれたかのように吹っ飛んだりと、暴力をもはやギャグとして描写。 さらに、金庫を見つけたソクトがダイヤルの音に耳を澄ませながら金庫を破ろうとするもうまくいかず、最終的に怪力でこじ開けるというギャグなど振り切ったシーンのオンパレードだった。 ■最新作にはこれまでのコミカルな要素がてんこ盛り 最新作『犯罪都市 PUNISHMENT』も、骨太なアクションのなかに笑いが絶えないこれまでの路線が貫かれている。今回の物語は、フィリピンに拠点を置く国際IT犯罪組織にソクトが挑むというもので、“拳 vs IT犯罪”という構図自体がユニークだ。 デリバリーアプリを悪用した麻薬密売事件を追うソクトは、手配中のアプリ開発者が謎の死を遂げた事件の背後に国際IT犯罪組織の存在を突き止める。拉致、監禁、暴行、殺人を厭わず、オンラインカジノ市場を掌握した特殊部隊出身の“元傭兵”ペク・チャンギ(キム・ムヨル)と、さらなる野望を企む“ITの天才”チャン・ドンチョル(イ・ドンフィ)らによるIT犯罪を食い止めるべく、捜査を開始していく。 「クラウド」という用語を間違って理解したりと、デジタル関連はてんでダメな様子がなんともかわいらしいソクト。今回ばかりは出る幕なしかと思いきや地道に足で稼ぎ、キーマンを捕まえては“真実の部屋”をチラつかせたりと、お決まりの笑いを交えつつ真相に近づいていく。 おなじみのイスもロン毛の成金として再登場。オンラインカジノ事業に手を出していた経験からまたも捜査に協力させられると、危険な潜入捜査に利用されるなどこれまで以上に大活躍。さらに怪力ギャグも冒頭からフルスロットルで、スクーターで逃げようとするチンピラを後ろから片手で掴んで止めたり、犯罪組織に設置されていた巨大な鉄格子を一人で外してしまったり…出血大サービスとなっている。 悪を成敗するストレートで爽快なストーリーと見応えのあるアクション、そこに笑いが加わり、これ以上ないエンタメとなっている「犯罪都市」シリーズ。警官の暴力という不謹慎な笑いが成立するのも、圧倒的な肉体とチャーミングな魅力を併せ持つマブリーだからこそ。最新作でもその魅力を存分に味わってほしい。 文/サンクレイオ翼