「キャンプの備えがあれば、避難生活にも」ソロキャンプに魅了された料理人が考える『災害時に活かせる』スキルとは
「女子キャン」の講師も
日本に帰国後は埼玉県内で独立し、フランス料理の店を開いた。若い頃に抱いていた「自分の店を持つ」という夢を実現。その後は「25年間携わった料理を卒業して、好きなキャンプをメインの仕事にしたい」と思い描いて2021年2月、香川県観音寺市の地域おこし協力隊員として活動を始めた。 香川県は、祖父母が住んでいた土地でもあり、小原さんにとって「夏休みになると遊びに行く自然豊かで大好きな場所」だった。活動の軸をキャンプに寄せたかったが、料理に関わる仕事を依頼されることも多かった。 同市五郷地区では、手作りの本格石窯を使ったピザ教室が定期的に開かれた。地元で採れる野菜をトッピングしたピザ作りを参加者に体験してもらう活動だ。三豊なすや原木しいたけ、オクラ、ピーマンなど野菜をふんだんに使っており、煙から出た煙がピザに香ばしさを加えて味わい深かった。 キャンプを学びたい女性を対象にした「ビギナー女子キャン」の講師は、ボランティアで引き受けた。メタルマッチを使った火起こしや、一人でも立てられるタープの設営、キャンプの危険や注意点などを教えた。40人ほどの卒業生を輩出し、小原さんが管理するプライベートキャンプ場で安全にキャンプを楽しんでもらっている。 2024年1月に協力隊員の任期を終えると、3月に同市内でオーナーシェフとして飲食店「BAR KNUT(バル・クヌート)」をスタートさせる。ランチでは本格ピザ、ディナーは小原さんの経験を生かし、フランス料理やキャンプ料理からヒントを得た料理と自然派ワインなどが楽しめる店になる予定だという。
キャンプを楽しめば防災準備に!?
自然の中で焚き火を見つめながら、料理や飲み物を楽しむ。そんな贅沢なキャンプの時間だが、小原さんの中では災害時のサバイバルと結びつく。大災害のたびに繰り返される避難所の様子を映像で見ると「キャンプ道具の備えがあれば、避難生活にも使える」という思いを抱く。 小原さんの車には普段から寝袋を積んでおり、飲み水に使える携帯浄水器を常備。火起こしには、火打ち石やメタルマッチを使う。すぐに食べられる非常食として、普段から乾麺のパスタを備蓄している。 日本の災害時の避難所は、プライバシーが十分に保たれていないなど課題が多い。災害時の避難場所としてキャンプ場を開放している場が近くにあった場合、プライバシーが保たれる場所でキャンプのライフハックを生かしつつ過ごせればよいのではないかと小原さんは考えるという。 休日の楽しみでもあるキャンプが、緊急時にサバイバルのスキルになるなら一石二鳥ではないだろうか。 「キャンプに行けるということは、しばらくの間は自力でサバイバルできるということです。便利になりすぎた現代社会において、自然の中で不便を体験したり、危険を知ることは大切だと感じます。自分でもソロキャンプを楽しみながら、キャンプのスキルを多くの人に伝えたいと思っています」
さぬきクロスケ