「100年前から親日」のトルコ軍艦9年ぶり来日 実はウクライナ軍艦もコレ!? アジア歴訪は“別の意味”あり?
「クナルアダ」はどんなフネ? いろいろメイド・イン・トルコ
「クナルアダ」はイスタンブール海軍工廠で2019年9月に竣工しました。トルコが進める国産哨戒・対潜戦闘艦計画「MILGEMプロジェクト」で開発・建造されたアダ級コルベットの4番艦で、艦名はイスタンブール市の沖合に点在するプリンスィズ諸島のなかで同市に最も近い「クナルアダ島」に由来しています。 特長としては、国産対艦ミサイル「ATMACA」や、独自開発の戦闘管理システム「ADVENT」を搭載した最初の艦艇だというのが挙げられるでしょう。 「ADVENT」は海軍とHAVELSANが共同で開発したトルコ独自の軍用システムです。艦上に搭載されている複数のセンサーから得られたデータを収集し分析、シミュレーションを行うことで、作戦時における意思決定を支援します。 加えて自動的に脅威を評価し、センサーを対象に割り当てることで、脅威度に応じて対抗するための武器を割り当てることができるのだとか。さらに、ネットワーク・インフラストラクチャーによって、他の艦船の武器やセンサーと組み合わせて使用することができ、戦術状況図や必要なデータを交換することも可能です。
日本以外の国々への来航は親善以外の意味も
対艦ミサイル「ATMACA」は、ロケット・ミサイル製造会社ROKETSANが開発しました。射程は220kmあることから、トルコ海軍はハープーン(射程140km)より長射程だと説明しています。 「ポイント・ツー・ポイント・データリンク接続機能によって、ミサイルとの通信が可能だ。データリンク機能を通じて、艦内部からミッションの中止、変更、ターゲットの更新、必要な情報の取得ができる」(トルコ海軍の担当者) フリゲート艦、コルベットなどに搭載可能で、水上目標だけでなく陸上目標への攻撃にも使用できるそう。なお、将来的には潜水艦からの発射にも対応することを計画しています。
海外輸出が着実に!
トルコは国産兵器の開発を推進しており、「過去20年間の成果により、外国依存度を80%から20%に減らすことができた」(トルコ軍の担当者)と話していました。 アダ級コルベットはトルコ海軍だけでなく、パキスタンやウクライナにも輸出されています。2024年6月10日にはマレーシアがアダ級をベースとした沿岸任務艦(LMS)3隻を導入することが発表されました。同艦はトルコ防衛大手のSTMが主契約者として選ばれており、今後はマレーシア海軍の要求に合わせて同社が設計から建造、納入まで担当することになります。 今回の「クナルアダ」来日は、冒頭に記したように「日本とトルコの外交関係樹立100周年」に関連したものですが、日本以外の国々への立ち寄りは輸出を睨んでの海外PRの一環だと言えるのかもしれません。 なかなか日本では見ることのないトルコ軍艦、見学することができたなら造船分野や防衛分野で存在感を増しつつあるトルコの技術力の一端を見ることができるのではないでしょうか。
深水千翔(海事ライター)