『マル秘の密子さん』桜井日奈子が千秋役をキュートに好演 意外な人物の推し変で大荒れに
「推しに理由なんてない。気がついたら推してるのが推しってもんでしょ」 選挙における投票は、いわば“推し活”。そのたった一票が世界を大きく変える。『マル秘の密子さん』(日本テレビ系)第6話では、意外な人物の“推し変”によって九条開発の社長選が大荒れとなった。 【写真】遥人(上杉柊平)と話す密子(福原遥) 姉・鞠子(泉里香)が亡くなった火事の真相を追う中で、命の危険に晒された密子(福原遥)。彼女を間一髪で救ったのは、敵であるはずの遥人(上杉柊平)だった。だが、意識を失っていて、その事実を知らない密子は遥人が犯人だと疑ったまま。そんな中、千秋(桜井日奈子)が遥人にはアリバイがあると主張し、火事の真相は闇に葬られた。 その後、遥人のピンチを救ったことで美樹(渡辺真起子)の信用を得た千秋は彼女に“お使い”を頼まれる。遥人が世話になっている人物へのお礼としてお菓子を託されるが、その中身はなんと札束だった。美樹は遥人が進めるリゾート開発をスムーズに実現させるため、県議会議員に賄賂を渡していたのだ。 時を同じくして、鞠子が残した隠しファイルから裏帳簿と見られるメモを見つけた密子。裏付け捜査を進める中で、千秋が賄賂の運び屋をさせられていることに気づいた彼女は、「これはれっきとした犯罪であり、警察に通報すればあなたも共犯として逮捕される」と警告する。しかし、千秋はそれも覚悟の上だった。 秘書として遥人を献身的に支える千秋。そのため、当初は密子を排除しようとしていたが、逆に弱みを握られて仕方なく従ってきた。本作では、コメディ担当であり、密子を出し抜こうとするも詰めが甘くていつもうまくいかない千秋を桜井日奈子がキュートに演じている。そして、彼女の最大の憎めなさは、遥人への海よりも深い愛情にある。遥人の隠し撮り写真を何枚も保有していたり、アクリルスタンドやスタンプを自作したりと“推し活”に励んでおり、彼のためなら何でもする覚悟だ。 そんな彼女の純粋な思いを、美樹は犯罪に利用している。それを分かった上で従った千秋にも問題はあるが、密子は告発する気にはなれなかった。なぜなら、生前の鞠子も九条家にいわれのない罪や責任を押し付けられていたから。不正を暴けば、社長選で夏(松雪泰子)が勝てるかもしれない。それでも、姉の姿を重ねる千秋の人生を犠牲にすることができなかった密子。自分を本当に大事にしてくれる存在に気づいた千秋は、社長選の直前で賄賂の存在を会長の五十鈴(小柳ルミ子)に明かす。 しかし、美樹に動きを読まれており、不正を暴くことはできなかった。夏の勝利は絶望と思われた社長選。だが、蓋を開けてみると、夏と遥人で票は真っ二つに割れる。実は千秋が推しを遥人から密子に変えた裏で、もう一人の人物が“推し変”を遂げていた。 この第6話で明らかになったのは、美樹の執念だ。自身が五十鈴から「あなたが男だったら」と散々言われて育ったため、念願の息子だった遥人をどんな手を使ってでも社長の座に据えようとする美樹。その裏で不遇を強いられていたのが、娘の玲香(志田彩良)だ。彼女は個人的なイベントに有名人を招いたり、SNSのフォロワーを買うために会社の金を使い込んでいた。それ自体は許されることではないが、そうまでしてでも彼女が社長になりたかったのは母である美樹に自分のことを見てほしかったからだろう。 そんな娘の切実な思いにすら目も向けず、美樹は玲香を引きずり落とすために、彼女の横領を告発する。そのことを知った玲香は自分の力を必要としてくれた夏と手を組むことを決意。社長選で自分を支持する幹部とともに、夏へ一票を投じる。その場で自分を懐柔するために美樹がプレゼントしたネックレスを引きちぎる場面は胸のすく思いがした。千秋も玲香も自分を大切にしてくれない人の支配から抜け出し、世界を変えたのだ。 遥人も賄賂の存在を知らなかったことから考えると、密子の本当の敵は美樹なのかもしれない。それとも一見フラットな視点で次期社長にふさわしい人物を見極めているように思える五十鈴が黒幕なのか。華麗なる一族の闇はまだまだ深そうだ。
苫とり子