TikTokは徹底抗戦の構え、米国で再び禁止論-利用者1.7億人盾に
(ブルームバーグ): トランプ米政権が4年前、米国で動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の利用を禁止する構えを見せると、親会社である中国の字節跳動(バイトダンス)は、事業売却に向けた予備的な協議を行った。だが、今回は事情が異なる。
米政府はここにきて再び、TikTokをバイトダンスから切り離さない限り、米国でのアプリ利用を禁止する意向だ。だが、同社は売却の意思がないことを明確にしている。TikTokの経営陣は、米議会で禁止法案が可決された場合には、法廷で争う方針を従業員に伝えた。
これで米政府とTikTokとの間で、重大な法廷闘争へと発展する舞台が整う。TikTokの親会社バイトダンスは中国の急速な技術発展を象徴する存在だ。その結果は、テンセントやPDDホールディングス傘下の「Temu(ティームー)」といった米国市場への野心を募らせる中国企業のビジネス展望を決定づけるかもしれない。また、バイトダンスから華為技術(ファーウェイ)に至るまで、中国を代表する有力企業に対して圧力が強まる中で、中国政府がどう対応するかの試金石ともなる。
復旦大学アメリカ研究センターの主任、呉心伯氏は「TikTokだけではない。米国がファーウェイに矛先を向けて以降、今では数百の中国企業が米国の制裁下に置かれている」と指摘。「将来的にはTemuや他の電子商取引(eコマース)企業も影響を受け得る。米国の同盟国もTikTok禁止で追随するかもしれず、これはドミノ効果をもたらす可能性がある」と述べた。
バイトダンスには、米政府に対抗すべき確固とした理由がある。まず、米国事業の規模は2020年をはるかに上回っている。当時1億人弱だった利用者は1億7000万人まで伸びており、売上高も他の市場と比べて突出する。
トランプ政権が目指したアプリ禁止が頓挫して以降、TikTokはインフルエンサーを軸とするeコマース事業を構築してきた。その結果、数百万に上るコンテンツクリエイターや中小企業が収益確保でTikTokに大きく依存。米経済の大部分と切っても切り離せないほど結びつきを強めた。7月頃にはメキシコでライブショッピングを開始する準備も進めていると、この件に詳しい人物が明らかにした。米国で禁止されれば、世界展開に一段と広範な影響を及ぼす恐れがある。