帰省中の地震「元日は卑怯ですよ」 亡くなった9歳息子…顔のアザは“頑張った証し”
■「家族との“最後の別れ”を守れるように」
遺体が見つかっても、遺族が弔うことができなかった理由。それは、現地で火葬場が被災してしまったためだ。石川県によると、被害の大きかった奥能登(珠洲市、輪島市、能登町、穴水町)では、8基あった火葬炉のうち7基が地震で損壊した。 この“緊急事態”に、県内の葬儀業者などは県との協定に基づき、奥能登以外の自治体に遺体を搬送することに。寸断した道路や、被災地に向かう車の大渋滞…。遺体は時間の経過とともに傷むため、搬送は急を要した。 葬儀会社のスタッフは、早朝に金沢市を出発し、現地で遺体安置所を回ると、戻るのが日付けを越えることも。それでも「少しでも家族の“最後の別れ”を守れるように」。 搬送待ちの遺体は輪島市だけで、多いときに40~50体ほどあったというが、17日をめどになくなる見込みだという。
■息子の顔のアザは“頑張った証し” 別れの前は「そのままで」
妻・裕美さんと息子・啓徳さんの遺体を金沢市の斎場に連れてくることができた角田貴仁さんは「ほっとしてます、すごく」と漏らした。 「(息子と妻は)最後まで頑張った。ちゃんと送ってやりたいと思います」とする貴仁さんに、福井から応援で訪れた納棺師・浅野智美さんが「奥様と息子さん、気になるところはありますか?」と声をかけた。 貴仁さんは「特別にはないです」と応えた後、こう続けた。 妻と子を亡くした角田貴仁さん 「息子の顔が黄色いアザになっている。それを…“そのまま”にしてもらってもいいですか?」 「息子が頑張った証しなので。とりあえずはこのままで、自然な感じで」 家屋の倒壊でできた顔のアザは、9歳の息子が頑張った証し…。貴仁さんは、“誇らしい”とする息子の顔を、なるべくそのままにして見送ろうとしている。納棺師・浅野さんは、状態の悪化を防ぐための、最低限の化粧だけを施した。