未来を予知した映画は? 不吉な予言を的中させた名作(2)東京がヤバい…日本の危機に警鐘を鳴らしていた?
かつて映画で描かれた光景が現実化する…。そんな奇跡のような事態がごく稀にだが、起こる。優れた映画作家は未来を見通す力があるのだろうか…。今回は、まるで未来を予知していたかのような映画を5本セレクト。背筋がゾッとすると同時に心がワクワクする作品を選んだ。第二回。(文・シモ)
『AKIRA』(1988)
製作国:日本 上映時間:124分 監督:大友克洋 原作者:大友克洋 【作品内容】 1988年の7月に、関東に新型爆弾が落とされたことがきっかけで、第三次世界大戦が起きる。 その31年後の2019年になると、新たな都市・ネオ東京が生まれていた。 翌年には東京でオリンピック開催を控えるこの街で、不良少年の金田と仲間たち、謎の軍との抗争が勃発する。 【注目ポイント】 本作は、漫画家・アニメーター・映画監督の大友克洋が1982年に「週刊ヤングマガジン」で連載していた同名コミックを、自ら監督した作品である。 1982年の時点で、約40年後の東京オリンピックを予見していた大友の慧眼は素晴らしいの一言。実際、新型コロナの影響で当初の予定から1年遅れて、2021年に東京オリンピックの開催が決定した際には本作に大きな注目が集まった。 『AKIRA』には、建設途中の競技場に「開催迄あと147日」の看板が立てられ、その横に書かれた「中止だ中止」という落書きを映したショットがある。現実でもパンデミック下でオリンピックを開催することに対する疑問の声は強く、抗議デモが頻繁に行われたのは記憶に新しいだろう。 結局、東日本大震災からの復興という願いを込めてスタートした東京オリンピックは、競技のほとんどを無観客とする形で開催されたが、期待された爆発的な経済効果、俗に言う「五輪特需」は幻となった。 その後、円安の進行などにより、日本は低迷を余儀なくされることになる。 物価高騰による生活の困窮、先行きの見えない不安に加え、世界各地で起こっている戦争の激化も、我々のメランコリックな気分に追い打ちをかける。現実の東京が、『AKIRA』が描いた退廃都市・ネオ東京化する日もそう遠くないのかもしれない。 (文・シモ)
シモ