大西流星主演の映画『恋を知らない僕たちは』。酒井麻衣監督が明かす胸キュンシーンの撮影秘話
10代ならではの恋のときめきが詰まった胸キュンシーンの数々
ーー高校生ならではの恋のときめきや葛藤を描く上で、監督が特に意識したこととは? また、見どころとなるシーンやそのシーンに込めたこだわりを教えてください。 本作に登場する高校生6人は恋に不器用なキャラクターが多いので、恋模様が描かれるシーンは目線や呼吸で本心をにおい立たせるということを意識しながら撮影していきました。例えば、英二と瑞穂の図書室での“棚ドン”シーンは、瑞穂が英二を意識する重要なシーンなので、間合いや目のきらめきを大事にしていて。英二は転んだ瑞穂を心配しただけでモテようとしているのではないことが伝わるように、本を落とすタイミングにもこだわって、目や表情で気持ちを表現していただいています。 それから英二と小春の距離が近づく保健室のシーンは、自分の気持ちを言語化できていないのに、行動が先走ってしまったリアルな感覚が出ればいいなと。「ここからは恋愛感情」とはハッキリ決めずに、心の揺らぎは揺らぎのまま、シーンを作り上げていきました。 また前半の見どころでもある夏祭りのシーンは、ほぼ自由芝居。「直彦にアタックする小春を英二が邪魔をする」というお題でお願いしたのですが、大西さんのコミュニケーション能力と表現力で、みんなの芝居を引き出していましたね。 ーー本作では、男同士や幼なじみの友情を描いているシーンも。そういったシーンでは、キャストのアドリブもあったと聞きましたが、本当でしょうか? はい。原作のキャラクターを大事にするというのは前提で、キャストの皆さんには「アドリブは大歓迎」と伝えていたので、友情シーンなどはアドリブから生まれたやり取りを生かしたりもしています。特にアドリブが多かったのは、太一役の猪狩さん。直彦にラムネを差し入れて「飲もうぜ」と言うシーンも猪狩さんのアドリブだったり、英二や直彦との会話シーンも台本上のお芝居を終えた後にあえてカットをかけずに長回ししたら、3人のやり取りがおもしろかったのでそれもそのまま使っています。 それから、海で英二、直彦、泉がじゃれ合うシーンはだいたいの動きのリハーサルをしてから、実際に海に入って一発撮りで撮影しました。撮影時期は春先で海水がまだ冷たかったこともあり、撮影前には 3人で円陣を組んで「頑張ろうぜー!」と気合を入れていましたね。英二と直彦が衝突した翌朝に廊下で会ってしまうシーンも、話したいのに話せない、そんなもどかしい空気感が目線だけで表現されていてとても良いシーンになっているので、それぞれの友情にも注目しながら見ていただきたいです。 ーーエネルギッシュなライヴシーンも印象的でしたが、バンドマンの太一を演じる猪狩くんの役作りの様子は? また、ライヴシーンの撮影はどんな雰囲気でしたか? 太一の歌でみんなの恋が包まれる、クライマックスの体育館でのライヴシーンは見どころの一つ。猪狩さんは歌に加えてギターの演奏もあり、撮影に入る前から熱心に特訓してくださいました。演奏指導の方は、「この短期間でここまで弾けるようになるとは思ってなかった」と上達ぶりに驚いていましたね。また、歌唱シーンの引きのカットは喉に負担がないようにプレイバック撮影しているのですが、寄りのカットでは実際に歌ってもらって生歌を録音して、映画でもその歌声を使用しています。 ライヴシーンは撮影場所の学校にご協力いただき、600人の生徒さんがエキストラとして参加してくださったのですが、猪狩さんが生徒の皆さんに自ら声を掛けて、士気を高めてくれて。さすがいつもライヴで観客の視線を集めているだけあるなと感じました。 ライヴパフォーマンスもパワフルな猪狩さんの本領が発揮されていて、ご本人の魅力が詰まったシーンになったと思っています。 ーー衣装の制服やヘアスタイルなど、キャラクターのビジュアル作りでのこだわりもありましたら教えてください。 劇中の衣装はほとんど制服姿ですが、英二と小春はやんちゃっぽいスタイル、直彦と泉、瑞穂はきっちりとした雰囲気、太一はロックっぽくするなど、パッと見で6人の個性がわかるようなスタイルになるようにスタッフ陣と心掛けました。 それから、シーンごとに制服の着こなしに変化をつけたのもポイントです。高校生って思っている以上に大人だし、こだわりも持っていると思うんです。なので、今の高校生たちのファッションに対するこだわりというのを大切に表現しました。パターンが多いので、衣装合わせのときはものすごい数の制服を皆さんに着ていただきましたね。ヘアメイクも衣装も原作のイメージを大事に、「それぞれのキャラクターが現実に生きているとしたら」と考えながら作っていったので、ビジュアル面も楽しんでいただけたらと思います。
室井瞳子