【漫画】両親は死神!?私を苦しめる「双極性障害」は父から遺伝したのか?母から遺伝したのか?【作者に聞いた】
「中学校2年生から高校1年生までのはっきりした記憶がない」 そう語ったのは、書評ライターや連句人として俳句や文芸情報をX(旧Twitter)で発信をしている高松霞さん(@kasumi_tkmt)。 【漫画】本編をイッキ読みする 家族の不幸に無意識に追い詰められていた日々と、それにより発覚した躁うつ病との日々を綴ってもらい、その心情にぴったりな俳句とともにコミカライズ。 作画は、自らのことを「霊感のようなものがある人間」と紹介する漫画家・桜田洋さん(@sakurada_you)が担当。その柔らかで心に染み入る絵のタッチと、鮮やかな色づかいが魅力だ。 今回は躁うつ病の遺伝について、落語「死神」を交えながら表現してもらった。高松さん自身の俳句もあるので必見だ。 ――今回の話で、一番読者に伝えたいことは何ですか? 高松霞さん(以下、高松):今回は私のトラウマの話です。躁うつ関係ないじゃないかと言う人がいるかもしれないけれど、話の終盤でも触れたように、双極症って遺伝の可能性があるんですね。もし、父か母のどちらかが、もしくはどちらも、双極症なのかもしれない。それと、親に愛されていてもいなくても、大人になることはできるということも書きたかったです。 ――1つ目の俳句「小鳥きて姉と名乗りぬ飼ひにけり」について、どのような思いで選んだのでしょうか? 高松:姉という「役割」を飼う、っておもしろいですよね。私も「霞」ではなく「姉」「長女第一子」としての役割を与えられてきたなあと、シンパシーを感じて選びました。 ――落語「死神」を混ぜ込んだ話になっています。その狙いを教えてください。 高松:今回のエピソードは、自分に起こった出来事として感じにくいものです。なので、落語の噺にしてしまえば、まだ「読める」のではないか、と考えました。それはきっと読者も同じで。少しでもいいから救いが欲しかった。でもつらかったですね。書いたら楽になるかなと思ったけれど、全然つらいし、漫画をチェックするのもつらかったです。薄目で読んでました(笑)。 ――2つ目の俳句「しりとりは生者のあそび霧氷林」について、どのような思いで選んだのでしょうか? 高松:しりとりは「生者のあそび」ということは、死んでいる者にはできない。生きていることを確かめるように遊んでいる姿が、霧氷林の中に薄っすらと見える。すると、しりとりはそのループの周りにいる、死者を追い払う呪文のような気もしてきます。 ――「アジャラカモクレン テケレッツのパー」という2回の拍手とともに唱えられる呪文が、父親との電話と、母親との電話の際に出てきます。このどちらにも登場する意味を教えてください。 高松:落語の「死神」の呪文って、病人が寝ている足元にいる死神を追い払う言葉なんですよね。けれど呪文を唱えて寿命を増やした分、自分の寿命が減ってしまう。私はふたりともに死んでしまってほしいと思っているし、ふたりともに生きながらえてほしいとも思っています。 第3話では、両親との電話に、落語「死神」を重ねて描いてもらった。咲いていた朝顔が萎れていき、ぼとぼと落ちていく様子が心情と重なる描き方は、圧巻だった。人とは異なる視点で眺めた世界と、じわっと心に染み入る俳句が織りなす情景を、じっくり味わってみてほしい。