はやぶさ2の近況をJAXAが説明(全文1)リュウグウまで約750km 27日到着予定
光学電波複合航法の説明
次が3項目目、光学電波複合航法なんですが、ここはちょっと詳しいご説明をしたいと思います。まずこの略して光学航法と呼んでしまいますけれども、この光学航法が必要な理由は、地球から約3億キロ離れたところで大きさが約900メートルと想定される天体に到着しなくちゃいけないってことで、これは探査機のほうの軌道にも誤差がありますし、小惑星の軌道にも誤差があるということで、その誤差を縮めながら到着する必要があります。例えばその表にありますように「はやぶさ2」のほうはRARRという従来の電波航法によると3億キロかなたで、位置誤差が300キロメートルになってしまうんですが、実はDDORという新たな方法を今回、採用していますので3億キロかなたで「はやぶさ2」の位置誤差は数キロメートルで実は決まります。 で、ところが小惑星リュウグウのほうは、今年の5月時点での軌道位置誤差がだいたい220キロメートルあるんですね。で、220キロメートルもあると当然相手の大きさは小さいですから到着できません。ということでこのあとご説明します光学航法を使うということになります。で、参考までに3億キロメートル先の900メートルということなんですが、これを単純に縮尺しますと2万キロメートル先の6センチに等しいということになります。つまり日本からちょうどブラジルまでの距離、地球の表面に沿っていくとだいたい2万キロメートルぐらいになると思うんですが、ブラジルにある6センチの的を狙うのと同じぐらいの精度ということになります。これは「はやぶさ」初号機と同じことになります。 で、光学電波複合航法、ちょっとこれ複雑なんですがまず原理的なことをお話ししますと、まずそこにありますように太陽があって、で、地球は太陽の周りを回っていて、地球の軌道は正確に分かっています。それで地球に対して小惑星の軌道があるわけですけれども、小惑星の軌道も一応、太陽の周りを回っているということで天文学の観測である程度の精度、先ほど言いましたように220キロメートルの精度で分かると。で、さらに地球と探査機は、これは電波航法によって、例えばDDORも使って地球から見た「はやぶさ2」の位置が分かる。で、さらに光学航法としては「はやぶさ2」から見たこの小惑星という方向が分かるわけですね。で、このちょうど三角形ができるわけですけれども、この三角形を正確に求めていくことで「はやぶさ2」の位置、およびリュウグウの位置が正確に分かると、そういう手法になります。 ですからこのマル2、探査機から見た小惑星の方向という情報が非常に重要なデータになるということになります。で、その次のページにありますように、その方向というのは探査機が宇宙空間を飛行していますとリュウグウがいて、で、探査機から見て背景の星の中にリュウグウが見えるわけですから、この背景の星に対してリュウグウがどこにいるかを正確に計測すれば、探査機から見たリュウグウの方向が分かるというわけですね。この背景の星の位置は、これは今、天文のほうで非常に正確に分かってますので、背景の位置に対してこのリュウグウの位置を出すという作業を行っているわけです。 で、この図のように見る方向が左右に振れますと、これはちょうどステレオ視と同じ原理ですね。正確には移動ステレオ視の原理と書いてありますが、そのことによってさらにこの距離感も分かるということで、実際に「はやぶさ2」はこのようなやり方を取ってリュウグウに接近をしていくということになります。で、その実際のデータが次のページにあります。17ページです。 で、まずこの左の図、これがここのゼロのところにリュウグウがいまして、真上が地球の方向になります。で、この距離が2000キロメートルまで取ってみますとだいたいこんな感じで6月8日からちょっとこの座標系複雑なんですが、この座標系で見るとこのようなカーブを描いてリュウグウに接近をしていくということになります。さらにこの250キロメートル以下を拡大したものがこの右側になりまして、このようにちょっとカーブを、円弧みたいなものを描きながらだんだんと接近をしていくと。こういうやり方で正確にリュウグウに到着するやり方ですね。これを今回は採用しているということになります。このがくっと角張ったところ、ここにTCMと書いてありますが、これはTrajectory Correction Maneuver、いわゆる軌道修正ということでここのTCMのところで化学エンジンを噴いて軌道を変えていくと、そういうことを行っております。 で、実際の作業、これ、かなり複雑なことをやるわけですけれども次のページにありますように、多くのメンバーの協力で行っております。で、まず「はやぶさ2」が画像を撮影すると、ここにソウル大学、日本スペースガード協会、京都大学、JAXAと書いてありますが、これは主に地上観測チームと呼んでいて「はやぶさ2」が打ち上がる前にターゲットの小惑星を地上から観測していたチームなんですが、そのチームの皆さんによって正確に「はやぶさ2」の位置、背景が恒星の中のどこにいるかを正確に割り出すと。で、そのデータを使って航法チームが、これはJAXAとNEC、富士通なんですが航法チームが探査機との軌道との関係を正確に出します。で、さらにそのあと誘導チームがどのように軌道を持っていけばいいかという計算をして、で、最後に運用チームが実際のスラスタ運用を行うと。こういったループをだいたい1日から3日間ぐらいで、ぐるぐる回しているということになります。で、あとで申し上げますが最終的な軌道制御は今、合計10回を予定しているということになります。