これから日本人はどうなるか…人口激減ニッポンで深刻すぎる「トリプルの縮小」が起きていた
この国の人口はどこまで減っていくのだろうか。今年1年間の出生数が70万人割れになるかもしれず、大きな話題となっている。 【写真】日本人は「絶滅」するのか…2030年に百貨店や銀行が消える「未来」 そんな衝撃的な現実を前にしてもなお、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。 ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。 ※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。
国内マーケットの「トリプルの縮小」
分散させてはならないのは企業内の若者だけではない。消費者も同じだ。 過疎地が広がり続ける人口減少社会の国土の在り方について、集住を進めるのか、分散して住む現状を維持するのかで意見が二分している。結論から言えば、「多極分散」ではなく「多極集中」であるべきだ。 人口減少社会において拡散居住が広がると、生活に密着したビジネスなどが極めて非効率になり、労働生産性が著しく低下するからである。 人々がバラバラに住むことで商圏人口が著しく縮小したならば、企業や店舗は経営が成り立たなくなり、撤退や廃業が進む。民間サービスが届かなくなればさらに人口流出が速まり、ますます企業や店舗の撤退、廃業が加速するという悪循環となる。 これを企業経営の観点でとらえると、「コストパフォーマンスが悪すぎて売りたくとも売れない消費者」の増加ということである。ただでさえ国内マーケットが縮小するのに、こうした消費者の“取りこぼし”は痛手だ。 問題はそれだけではない。「多極分散」では行政サービスや公的サービスもコストパフォーマンスが悪くなり、国家財政や地方財政が悪化する。やがて増税や社会保険料の引き上げにつながり、国民の可処分所得が低下するのである。 国交省の資料によれば、全国の居住地域の51.0%で2050年までに人口が半減し、18.7%では無人となる。社会インフラや行政サービスを維持するには、ある程度の人口密度が必要なのである。 今後は人口減少による国内需要の縮小と、消費者の高齢化に伴う消費量の縮小という「ダブルの縮小」が起きるが、そこに可処分所得の縮小まで加わったならば「トリプルでの国内マーケットの縮小」である。これは企業経営にとって経営困窮へのダメ押しとなるだろう。 企業や行政機関の経営の安定と地域住民の生活水準の向上とは表裏の関係にあるが、人口減少社会においてそれを両立させるにはある程度集住を図って、何とか商圏人口を維持するしかない。「多極集中」に対しては「地方の切り捨てだ」などの批判もある。むろん「多極分散」が理想であり、人口が増えていた時代ならば意見が二分することもないだろう。 だが、縮小していく日本においては「多極分散」は“命取り”なのである。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)