不法移民に「みかじめ料」を払い、不法労働で稼ぐ。それでもメキシコは祖国よりましだ 背後には犯罪組織?「無法地帯」で見た現実と埋めがたい格差
移民問題に取り組む団体の連合体「移民アジェンダ」でコーディネーターを務め、不法移民や周辺住民への聞き取りを行うエウニセ・レンドン(45)も、移民間で金銭の徴収が行われていると語る。ただ犯罪組織の関与については「全体像が分からない」と述べるにとどめた。 ▽高まる排外感情 レンドンは、広場や公園で過ごす移民の中には違法薬物の使用者がいて、暴力沙汰も起きていると説明した。「共生のための最低限のルールすらない」。周辺住民の間では外国人に対する否定的な感情が高まっているという。一方、不法移民の多くが目の前の生活のために不法労働に従事し、雇用者から足元を見られて低賃金や重労働で搾取されているとも指摘した。 警察や行政は何をしているのか。こう問うと「責任を押しつけあっている」との回答。事実上、何もしていないとの見解だ。不法移民の長期滞在という「未経験の事態」を前に、政府は対処能力を欠いているようだ。
メキシコでは2024年6月に大統領選が行われた。ロペスオブラドール大統領の路線継承を掲げる左派与党、国家再生運動(MORENA)のシェインバウム前メキシコ市長が勝利し、10月に大統領に就任する。レンドンは「不法移民を登録するなど最低限の管理を行い、労働力として位置付ける仕組みが必要だ」と注文を付けた。