バース、掛布、岡田の甲子園バックスクリーン3連発に残された謎
3連発は、槙原氏が、わずか6球を投じる中で起きた伝説だが、これにはもうひとつの謎がある。回は7回。バース氏にはシュートせずに甘く入った初球を逆転3ランにされた。しかも続くのは、左の強打者、掛布氏。打たれた槙原氏は、マウンドでしゃがみこむほどのショックを受けていた。 だが、巨人ベンチは動かなかった。なぜ槙原氏を代えなかったのかという疑問だ。確かに、ここまでは岡田氏のタイムリーの1点に抑えていてツーアウトだったが、交代の決断を当時の王貞治監督が下していてもおかしくない。 結局、掛布氏に打たれても続投。続く「ホームランを狙っていた」という岡田氏はスライダーを見事にバックスクリーンにまで運んだ。3人のうちでもっとも飛距離のあったホームランだった。ようやく王監督が動いて鹿取義隆への交代を告げたが、現在の野球なら継投の遅れを叩かれてもおかしくないだろう。 「前の日には河野の落球事件があって巨人が大敗していた。それが王さんの心理に影響を与えていたのかもしれないね。槙原も、後々、『ベンチがもう放置していた(笑)』と言っていた。でも、それも勝負の綾。伝説が生まれなかったのかもしれないしね」とは、掛布氏の見方。 4月16日の巨人戦では平凡な内野フライを名手、河埜和正遊撃手がまさかの落球で2-2の同点となり、勢いにのった阪神が10-2で大勝。その誤算ゲームから当時の王監督の采配にも狂いが生じたのかもしれなかった。 結局、このカードで3連勝。21年ぶりの優勝へとつながっていく。バース氏は、この日、「チームはスロースタートだったが、ジャイアンツに勝てないと優勝はできないと考えていた。あの3連発、あの3連勝でチームは自信を持ち、優勝へと導いてくれた。今年もスロースタートだが、去年もシーズンが始まるのは遅かった(笑)。優勝のできる力はあると思う」とエールを送った。 「あれから30年たっても今だに3連発が注目されているようではだめ。新しい伝説をつくってほしい」と掛布氏が言えば、岡田氏も「あの3本が分岐点となった。勝負には、こういうことも必要。今年も何かが起きてほしいね」と、レジェンドならではの熱いメッセージ。聖地甲子園を3連発セレモニーがおおいに盛り上げた一日だったが、今年初の本拠地巨人戦は、ゴメスの守備での判断ミスなどが響いて2-3で惜敗した。語り継がれる新たな伝説は、当分、生まれそうにない?