広島・榊山牛「4000円」駅弁の味 「32カ月以上の長期肥育」「飼料は独自配合」「ストレスのない牛舎の整備」
【肉道場入門!】絶品必食編 広島には4000円の和牛駅弁がある。それだけの話なら広島から帰京するため、空港に向かうのに、わざわざJR広島駅に立ち寄らなかったろう。 ところが調べてみると、どうも肥育に手をかけた榊山牛という和牛の弁当らしい。 「32カ月以上の長期肥育」「飼料は独自配合」「ストレスのない牛舎の整備」と書かれている。これは好ましい! 通常、和牛は26~28カ月程度の月齢で出荷される。長期の肥育はその分、事故や病気のリスクも生まれるし、長く飼えばその分だけ飼料代や世話代だって積み上がっていく。 飼料もコストだけ考えたら、リーズナブルな配合飼料でいいし、牛舎の整備にしてもわざわざ、うたい文句として書くほどのことか、という話ではある。 だけどそういう牛はおいしい。月齢の分だけ肉の味が重ねられ、牛の生育状況に応じて餌の配合も都度変わる。健康状態まで含め、丁寧に面倒を見て、ストレスの少ない環境で育てられた精肉は味わいが濃醇にしてクリアなのだ。 そして出荷された牛に対する敬意が、問屋、肉屋、飲食店へとリレーされるのだとすれば4000円は高くない。単なる高額弁当ではなく、その値段に至る理由があるのだ。 入場券を買って新幹線の改札を抜ける。コンコースから1本入った「焼肉ふるさと」店頭まで来ると、ずらり並んだ8種の弁当のサンプルが目に眩(まぶ)しい。 価格はメンチカツサンドの1000円から目当ての榊山牛弁当4000円までさまざまあるが、榊山牛弁当は、ローストビーフ、カルビ焼肉、牛めし、ビビンパというほぼすべての弁当の味がこの一箱に詰まっている。むしろお得な気さえしてきてしまうから不思議なものだ。 近代の名牛の家系が描かれた包装紙を外し、フタを開けると絢爛豪華な肉景色が広がる。 牛めしのアタマになる榊山牛の煮込み、カルビ焼肉、ローストビーフ。しかもカルビ焼肉とローストビーフにはそれぞれ別のたれが添えられている。 焼肉は香ばしく味わい深く、ローストビーフはジューシーでやわらかい。煮こんだ肉は噛むほどに味が伸び、ナムルや白飯も弁当向きのいい仕上がり。煮肉との相性も抜群だ。