LINE Pay退場、情報漏洩問題がダメ押し 後発ファミペイ・メルペイにも勝てず
株価ダウンか、プライム脱落か
LINEヤフーの苦境は株価にも反映されている。主力の広告やEコマース(電子商取引)は増益で業績は好調ながら、足元で株価は400円を下回る。情報漏洩によるブランドイメージの低下が響いている。 株主総会でも株価への指摘が相次いだ。「向上策をどう見ているのか」「取締役は責任をどう考えているのか」と手厳しい。同社の出澤剛社長は「株価下落は非常に厳粛に受け止めている」と話すが、具体的な策は見えない。 さらに株価が下がる可能性もある。 同社は流通株式比率が33.8%(23年3月末時点)であり、東証プライム市場の上場維持基準である35%に達していない。現状は「経過措置」として上場が認められているが、このままでは26年3月末には「監理銘柄」に指定され、早ければ同年9月には上場廃止になる。 流通株式比率を上げるためのシンプルなやり方は、親会社が単純に株式を売り出すことだ。ただし多くの株式が市場で一気に売却され供給過多となれば株価は下落する。公募の売り出しでは空売りが先行して、やはり株価下落が進む可能性もある。 LINEヤフーはもともと、親会社による株式売り出しを避けていた。代わりに同社は新株予約権と自社株買いを利用した複雑なスキームを組んだ。35%ルールを満たすために必要な株式である約1億株を親会社から自社株買いで買い戻しつつ、この自社株を対象にして新株予約権を証券会社に発行。証券会社が段階的に新株予約権を行使し、株式を受け取ってから市場で売り払うことで、流通株式比率を徐々に35%まで高めていく計画だった。 しかしこの計画は頓挫した。同社の株価が低く、証券会社が新株予約権を行使できなかったからだ。下限行使額は663円で、これを下回ると前述のスキームは使えない。LINEヤフー前身のZHDの株価は、22年初頭に下限額を割って以降は1度も基準を満たせなかった。当初は「24年3月期末まで」と設定していた上場維持基準への適合時期は、現在「25年3月末まで」に延長されている。 「プライム対応に関しては何らかの決着をつける」と、LINEヤフーの出澤社長は話す。しかし具体的な方針は公開されていない。株価下落のリスクを取って親会社に株を売ってもらうか、はたまた希薄化のデメリットを背負って新しく株式を発行するか。どんな方針を取るにせよ試練が待ち受ける。「セキュリティーの問題で忙しく、それどころではないのだろう」と関係者はささやく。 日本を代表するネット企業が統合したにもかかわらず、さえない状況がつづくLINEヤフー。ユーザーの期待を裏切るだけでなく、新しい価値を生み出すような事業再編ができるかどうか。試練は当分終わらなさそうだ。
杉山 翔吾