「転職先を決めずに会社を辞めてもいい?」→カツセマサヒコの答えが正論すぎて、ぐうの音もでなかった
● 「いつか好転するんじゃないか」 転職するのにはかなりの勇気が必要だった ――なぜ、5年間も耐えようと思ったのでしょうか。 居心地は悪くなかったんです。先輩も上司もすごくいい人で、単純に僕の能力が低い、というだけでしたから。 「(仕事に対する)適性と相性が悪いことで伸びしろが少ないだけだから、いつかは好転するんじゃないか」という気持ちがどこかにありました。あとは、本当に安定した企業だったので、心が多少苦しんでいても、我慢すれば生活に困ることはないんですよね。 「逃げないでいれば生きてはいける」っていう感覚があったから、飛び出すのにすごく勇気が必要な場所だったっていうのが、5年間も同じ会社に留まり続けた理由な気がします。誰か助けてくれ、とは思うけど自分からは飛び込みたくはないっていう感覚が当時はすごくあったので。 でも、5年目の時に編集プロダクションの社長から「採用試験を受けてみませんか」という連絡をもらって。それを見るまでは本当にどこも飛び込めず、配属2日目に登録だけしたリクナビNEXTからのメールをずっとスルーしている感じでした。 あの時、ちゃんと1回で飛び込んで偉かったなとは思いますけどね。今の自分は。
● 生涯年収で勝てばいいし 自分の選択を後から正解にすればいい ――当時27歳だったカツセさんが「新しい環境や職場に飛び込む勇気」を持てたきっかけは? 3つのきっかけがありました。 まず、編集者として働く先輩から「年収が下がっても生涯年収で勝てばいいんじゃない」っていう話をされて。実際、転職すると、前の会社よりも年収が下がる職場だったので、環境を変えることへの抵抗感がものすごくありました。“自分の努力次第では年収が上がっていくよ”っていうブラック企業によくある理を言ってて、それを鵜呑みにするしかなかったです。 だからこそ死ぬ気で働こうと思って、編集プロダクションに転職してからの最初の1~2年は家に帰らない日も何度かあって、ずっと原稿を書いている日々でした。それがあったから今の自分があるなという意味では、その先輩の言葉は大きかったです。 あとは、どこかで耳にした「選択自体は大事じゃなくて、選択したあとにそれを正解にするための行動が大事」という言葉に支えられていました。飛び込んでからが勝負なんだなと思えたし、振り返った時に「あの決断がやっぱり正解だった」と言えていれば勝ちだという感覚があったから、やってみるかと思えましたね。 あと一つは、当時すでに結婚していたことですね。独り身ではないわけだし、家族を路頭に迷わせるわけにはいかないというか。共働きではあったんですけど、家族が離散するわけにはいかないから、「生活できるだけの最低限の収入はもらえる会社に転職する」ということだけは自分の中で決めていたんですよね。 今も転職や退職については、無責任に背中押すことは言えないですけど、それぞれが選んだ道を後悔しないように頑張るだけな気がしますね。1回飛び込んでみて、ダメだったらもう1回転職すればいいですし。結婚も就職も、「絶対に1回で決めなきゃいけないものはない」と思ってるので、ずっとトライアンドエラーでやってもいいんじゃないかなとは思いますね。