めっぽう楽しめるけど…鑑賞後、神妙な気持ちになった理由とは? 実写映画『はたらく細胞』評価&考察レビュー
人間の体内の細胞を擬人化して話題を呼んだ清水茜の人気漫画を、『翔んで埼玉』(2019)の武内英樹監督が映画化した『はたらく細胞』が公開中だ。今回は今までにないユニークなコメディである本作の見どころを解説する。(文・小林久乃)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】衝撃の白塗り…佐藤健がカッコよすぎる! 貴重な劇中カットはこちら。映画『』劇中カット一覧
現代人に警鐘を鳴らす今までになかったコメディ
恐ろしいことに40歳を越えると、朝起きて絶好調という日が極端に少なくなる。老化というものを感じながらも過信を繰り返し、はたらき、遊ぶ。映画『はたらく細胞』はそんな自堕落な大人にこそ観てほしい、無病息災への気づきが詰まった作品だ。 映画の舞台は人間の体内と、父子家庭の漆崎家。真面目で健康的な生活を送る、娘の日胡(芦田愛菜)の体内は37兆個の細胞が活き活きとはたらいている。対するように父の茂(阿部サダヲ)の体内は、細胞にとってブラック企業。体に良くない嗜好品をこよなく愛する茂の生活習慣は細胞たちを苦しませていた。 そんなある日、日胡の体調に異変が起きてしまう。細胞たちは穏やかだった日々を取り戻すため必死にはたらき、健康を取り戻そうする……と、真剣な雰囲気の文調であらすじを書いているが、本作はれっきとしたコメディだ。
真顔と笑顔に引き裂かれる映画体験
注目は豪華なキャストに加えて、総勢約7500人といわれるエキストラ。彼らが細胞に扮したコスプレに近い衣装と、壮大なスケールの体内をイメージしたセットは目を見張る。ここで細胞たちが病原菌や体内トラブルと戦うことが物語のメインだ。 ちなみに映画のCMなどでよく見かけているであろう、赤血球(永野芽郁)と、細菌やウイルスを排除する白血球(佐藤健)も同じ場所で活躍する。 日常生活の何気ない擦り傷も「すぐに治るから」と放置しがちだけど、実は体内では交通事故でも起きたかのような大騒ぎ。事態を収束させるため、多くの細胞が身を挺してはたらいている。 何気ないくしゃみだって、立派な発作。体が受けたダメージを回復させるため、細胞が必死にはたらく…というよりは、戦う。細胞に影響を与える悪者が出てくれば、細胞たちは容赦なく、体を守るために相手を殺していく。スクリーンいっぱいに広がるデストピア感のある風景は…戦場だ。 かと思えば、人間の体調が良ければ細胞たちは明るい体内で、笑顔で楽しそうにはたらく。まるで体内はディズニーランドのように輝いている。陰と陽がひたすら繰り返されているような体内で、細胞たちが必死で頑張っている…と脳内が真剣モードに引っ張られそうになるが、ふと『はたらく細胞』はコメディだと振り返る。ああ、観ているこっちも忙しい。 ちなみに白血球に扮する佐藤健、顔がしっかりと白塗りだった。一歩間違えればホラー映画『テリファー 終わらない惨劇』のピエロのよう…いや、バカ殿にだって見えてしまうかもしれないのに、やっぱり彼は格好良かった。白塗りだろうと、なんだろうと、どこまでも佐藤健だということはメモしておく。