ジープにプジョーにフィアットと14ブランドも抱えるステランティス! 売れないブランドの廃止や統合はあり得るのか?
14のブランドを需要に合わせて振り分けるステランティス
これがステランティスというビジネス形態の特徴だ。そう感じる出来事が、日本でも報道されている。 【写真】イタリアでは大ヒット中! 一時期日本でも売っていたランチア・イプシロンとは ステランティスの上半期の実績に関連した、同社カルロス・タバレスCEO(最高経営責任者)が不採算ブランドの今後についてコメントしたとの報道である。また、欧米メディアのなかでは、ステランティスが所有する複数のブランドに関する今後の可能性についても記事化されている。 本稿では、こうした欧米メディアの報道内容は引用しない。真実かどうかを判断するための明確な裏付けがないからだ。そのうえで、ステランティスがもつブランドの今後について、これまでの筆者自身の経験を基に、あくまでも一般論として考えてみたい。 まずは、ステランティスという企業について簡単に触れておく。 日本では馴染みがないかもしれないし、また名前を聞いたことはあってもその実態をよく知らない人もいるだろう。 ステランティスが誕生したのは、いま(2024年)から3年前、コロナ禍の2021年。フィアット・クライスラーオートモーティブ(FCA)と、プジョー・シトロエンのグループPSAが合併したものだ。両社の合併については、コロナ禍に入る前から議論されており、筆者は2010年代後半に、海外モーターショーや日本国内の各種イベントなどで両社の幹部と意見交換するなかで合併に向けた動きがあることを認識していた。 ただし、実現に向けたハードルは高かった。20世紀に一気に拡大していった自動車産業の歴史のなかでも、ステランティスのような多国籍ブランドが一同に介する自動車企業体は極めてまれであり、その誕生に向けたハードルが高いのは当然だったといえよう。 現時点で、ステランティスの自動車ブランドは14もある。欧州ブランドでは、フィアット、アルファロメオ、アバルト、ランチャ、マセラティ、プジョー、シトロエン、DS、オペル、ボクスホール。アメリカのブランドでは、クライスラー、ラム、ダッジ、ジープ。 こうした庶民向けから富裕層向けまで、さまざまなブランドのなかで、部品共通性を高めたりEVに特化したり、また仕向けを上手く振り分けたりと、総合的なブランド戦略を描くビジネスモデルが、ステランティスである。 ブランド集合体であるステランティスは、社会情勢や国・地域の需要に応じて、その姿カタチをフレキシブルに変化させるという下地があるといえる。そのため、既存ブランドの実績によって、それらの統廃合や売却、または外部から新たなブランドの買収などについて、ステランティスの経営陣が厳しい目を向けるのは当然だといえるだろう。
桃田健史