1パック1万円超え?電力会社が手がける最先端のイチゴ園 福岡・朝倉市
テレQ(TVQ九州放送)
朝倉市にある「上寺いちご園」。こちら、ただのイチゴ園ではありません。 九州電力 田川直さん 「こちらのハウスでは超促成栽培でイチゴを育てている」 運営しているのは九州電力。さらに、旬の時期よりも早くイチゴを出荷できる「超促成栽培」の実証実験を続けています。本来、イチゴの旬は3月から4月ごろ。品種改良などが進みクリスマスケーキで需要が高まる12月下旬ごろから出荷されています。ただ、イチゴは暑さに弱いため、それよりも前の時期の栽培は難しかったのです。しかし、上寺いちご園では10月から収穫ができています。取材した11月20日も11月の後半でありながら次々にイチゴが収穫されていました。どうして早い時期に栽培ができるんでしょうか?その秘密が 「電気エネルギーを用いて10月からいちごを出荷できる仕組みを作っている」 イチゴ園はオール電化、先端技術を駆使した「スマート農業」で24時間、イチゴが育ちやすい環境を作り出しています。研究に5年費やしたという設備を具体的に見てみると、例えば この大きな機械。 Qこの機械は 「ハウス内の温度や湿度、太陽の光、水分量などを一元管理している」 情報は離れた場所にいてもタブレット端末で確認でき、ハウスに設置されたカメラで中の映像をリアルタイムで見ることができます。さらにイチゴの根元に通った3本の管からは、それぞれ根元を冷やす冷却水、肥料の入った水、光合成に必要な二酸化炭素を流しています。これらの分量も自動で調整するなど24時間、無人の運用が可能。ハウスを暑くない環境にすることで大幅に早い時期からイチゴが栽培できるようにしたそうです。国産のイチゴが出回らない時期にできあがった貴重なイチゴ味はどうなのでしょうか。「かおり野」という品種をいただきました。 記者 「超促成栽培のイチゴいただきます。ジューシーで甘くておいしい。冬のイチゴと遜色ないおいしいイチゴ」 味に関しても旬のイチゴに引けを取りません。いち早く収穫、出荷することで驚きの事実も。このイチゴを販売する福岡市天神のフルーツ店に聞きました。 南国フルーツ 広瀬駿さん Q10月はどのくらいの価格で販売 「1パック1万800円で販売していた」 超促成栽培で旬の時期より大幅に早くイチゴを出荷している朝倉市の「上寺いちご園」。そのイチゴを販売している岩田屋本店のフルーツ店を取材しました。 南国フルーツ 広瀬駿さん Q10月はどのくらいの価格で販売していた 「1粒1080円で1パック1万800円で販売していた」 1粒1000円を超える驚きの高級イチゴ。それでも10月に食べられる貴重なイチゴを味わおうと買い求める客も多いそうで週に5パックほど売れたといいます。 「(上寺いちご園では)一足先に良いイチゴを作ってくれている。イチゴ好きの人がたくさん買ってくれて、(客からは)早く食べたかったという声が多い」 季節が進むにつれ価格は下がっていますが、11月21日現在でも1パック約4000円で販売されています。いち早く市場に出荷することは、生産者の所得向上につながります。 九州電力 上田秀樹さん 「(イチゴの場合)10月はまだ一般の農家のイチゴが出回らない時期なので高単価の収益が見込める」 月別の卸売価格を見ると、10月が最も高くなっていて11月も旬の時期に比べて卸値が高いのが分かります。ところで、電力会社が農業に乗り出す狙いはどこにあるんでしょうか。 「九州電力のビジョンの中に地域の活性化のために一次産業に挑戦するという項目がある。2017年に九州北部豪雨で被害の大きかった朝倉市で復興事業も含めてここで事業をしようと決めた」 イチゴ園の横にある建物の中ではイチゴの生育状況のデータなどを共有する会議をしています。 「(いずれは)技術を農家に展開して、農家の収益の確保にもなるため九州電力としても事業化して地域の人と一緒に電化の促進、スマート農業の普及に取り組みたい」 九電は2025年度までに収支などを検証して超促成栽培のモデルを確立する予定で、2026年度以降新規事業として生産者に設備やノウハウを広めることを目指しています。 「スマート農業にはコストがかかるため設備投資を超えるメリットがないとなかなか普及していかない。コスト低減も含めて検証をして農家に展開できるモデルを作っていきたい」
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