世界的建築家・藤森照信が手がけた日本初の宿〈小泊Fuji〉のローカルな魅力とは?
コロカルニュース
■のどかな富士見町に佇む美しい宿 南アルプス、富士山、八ヶ岳と、四方を美しい山々に囲まれた長野県諏訪郡富士見町に、世界的建築家・藤森照信氏が設計を手がけた日本初の宿泊施設〈小泊Fuji〉が誕生しました。 【写真で見る】利用した人から「住みたい!帰りたくない!」という声もあがるというキッチン 昨年、同宿のクラウドファンディングを紹介しましたが、そこで集まった金額はなんと1000万円以上。 そんな、多くの人々の期待を背負って誕生した〈小泊Fuji〉のローカル的魅力を紐解いていきます。 ■自然と調和した建物 360°見渡す限り広がる青々とした田んぼ。長野県と山梨県の県境に近い、小さな集落の4000平米の敷地にある高台に〈小泊Fuji〉はあります。 コンセプトは「いのちの中で呼吸する」。“人と自然が織りなす里山の風景に、ゆっくりと心を満たす滞在”を目的として建てられたここは、1日1組限定(定員5名)の完全プライベートな宿。 「小泊Fuj」という名前は、藤森さんや所在地である富士見町、デッキから富士山が見えることから、4つの「フジ」を採用して命名されたもの。 田園風景にポツンと佇むメルヘンな建物は、まるで妖精のお城のようです。 「一見すると奇抜な建築ですが、田畑から南アルプスへと続く周囲の景観に溶け込んでいると、みなさま驚かれます。全国の藤森建築でも言えることかもしれませんが、元々この土地に在ったような佇まいになっているんです」 と、オーナーの山越典子さん。 藤森氏は自身の建築において「自然との調和」を大きなテーマとして掲げていますが、それは小泊Fujiでも健在です。 銅板の屋根の上には、近くの樹齢300年の枝垂れ桜にちなみ、フジ桜が植えられ、外壁には焼杉を使用。室内は壁を漆喰、床や家具などはクリの材で仕上げられています。 特に屋根は、銅板の経年変化と季節の植物の移ろいが相まって、四季を通してさまざまな表情を見せるでしょう。 この屋根に貼られた手曲げの銅板や外壁の焼杉は、クラウドファンディングのリターンであるワークショップで、のべ150人の協力を得てつくりあげたもの。 「建築は誰にでも関われるところがあるから面白い」と、藤森氏。あえてさまざまな人の手を介して建築する、氏らしい一言です。 ■白を基調とした温かみのある室内 同宿では、朝食は宿泊者自らが用意します。キッチンを利用した方からは、「お家のように建物との距離が近くなる!」「住みたい!帰りたくない!」という声が。一晩プライベートに過ごすことで、みなさん建物と親密になり、愛着が湧いてしまうそうです。 朝食に用意されているホットケーキミックスは、長野県産の小麦粉・玄米粉・蕎麦粉などをブレンドしたもの。洋とも和ともつかない素朴な味わいが、小泊Fujiで迎える朝にピッタリです。 オプションのしゃぶしゃぶセットは、小泊Fujiから見える田んぼで育ったお米、地元の旬の野菜、ご近所の平飼いの卵、松本で作られたお醤油や出汁、ごまだれの一式が揃っています。季節の野菜がたくさん食べられるため、通販して欲しいという声もあるほど。 宿に併設された宿泊者専用のパントリーストア(売店のような役割)では、地元のクラフトビールやお酒、近隣の農家さんから仕入れたお米やトマトジュースなど、地元の食品やお酒などが購入できます。