【高利益率の秘訣】あらゆるコストを可視化、あっというまに利益が増える「5段階の利益管理術」とは?
「売り上げを下げたほうが利益が出るなんて」「『無収入寿命』という概念に目からウロコ」「あっというまに利益が6000万円増えた」……。刊行後、読者となった経営者から続々とこうした声が寄せられた『売上最小化、利益最大化の法則』。著者の木下勝寿氏が経営する北の達人コーポレーションの「高利益率の経営」の秘密とは?(文/上阪徹、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部) ● 利益を商品・サービスごとに5段階で見える化する方法 北の達人コーポレーションという会社をご存じだろうか? Eコマースを中心に事業を展開し、高い利益率で株式市場からも評価されている企業だ。 代表の木下勝寿氏は1968年生まれ。リクルート勤務後、2000年に独立。2002年に北の達人コーポレーションの前身となる企業を立ち上げ、2012年に札幌証券取引所アンビシャス市場に上場。翌年から札証本則市場、東証二部、東証一部と史上初の4年連続上場を果たす。2019年には、木下氏が「市場が評価した経営者ランキング」第1位(東洋経済オンライン)にも選ばれた。 そんな木下氏の経営メソッドが詰まっている『売上最小化、利益最大化の法則』はロングセラーになり多くの読者から支持されている。いったい木下氏の経営のどこがすごいのだろうか? 大きな特色は、何より実践的であること。そして、既成概念を打ち砕かれるところだ。木下氏のメソッドで大きな反響を呼んでいるものの1つに「コスト」の発見手法がある。 私は資金なしで創業した。「失敗したらメシが食えなくなる」といつも震えていた。 売上が上がっても利益が出なければ会社はつぶれる。本当に儲かっているのか? 売上につながらないコストはないか? 最初から商品ごとにコストを一つひとつ計測していた。 これを長年続けた結果、「ここを見ればわかる」というポイントを発見した。(P.102) これを木下氏は「5段階利益管理」と呼んでいる。利益を商品・サービスごとに5段階で見える化する方法だ。 ● 利益に貢献するコストと貢献しないコスト 5段階利益管理は、会社の弱点が一発でわかるという。セミナーなどで5段階利益管理を知った人からは、こんな声が興奮気味に上がると記す。 「利益に貢献している商品、していない商品がはっきりした」 「事業部ごとに5段階利益管理をやった結果、どの事業部がうまくいっているのかがわかった」 「それまでコストをひとまとめに考えていたので、目からウロコだった」(P.7) コストには、利益に貢献するコストと貢献しないコストがあるのだ。隠れたコストをあぶり出し、無駄なコストを低減させ、利益率を高くしていく。それを可能にするのが、5段階利益なのだ。 5段階とは、次の5つである。 【利益①】売上総利益(粗利) 【利益②】純粗利(造語) 【利益③】販売利益(造語) 【利益④】ABC(商品ごとの人件費)利益 【利益⑤】商品ごと営業利益 5段階利益管理のメリットは、対前月での利益の増減要因が一発でわかることだという。そして、これはネット事業を営む会社だけに有効というわけではなく、どの業種にも応用が可能だという。 それぞれの計算式は以下だ。 【利益①】売上総利益(粗利) =売上-原価 【利益②】純粗利(造語) =粗利-注文連動費(注文ごとに発生するコスト) 【利益③】販売利益(造語) =純粗利-販促費 【利益④】ABC利益 =販売利益-ABC 【利益⑤】商品ごと営業利益 =ABC利益-運営費 利益を「商品ごと」に5段階で見える化することで、「売上は上がっているが、利益は出ていない商品」「売上は低いが、実は利益が出ている商品」などが一目でわかるという。 また、月次で比較しながら見ることで、利益額や利益率が下がったとき、「どの商品のどの段階」に問題があるかも見える。 つまり、どんな手を打てばいいのかが、すぐにわかるのである。 ● クライアントごとの利益管理ができているか さらに、5段階利益管理では、弱点がわかるだけでなく、「強み」もわかるという。「手間やコストがかかっていないが利益の多い商品」の特徴を分析し、その要因を新商品開発や新規事業開発に活かせばいい。 それによって、今までよりも少ない手間やコストで利益を増やしていけるようになる。会社を効率経営に変えていけるのだ。 5段階利益管理はどんな業種でも使える。導入の大まかな流れも解説されている。 ①利益の分類方法を決める ②5段階利益管理の経費項目を決める ③経営者が率先して導入し、月次で共有する(P.127) 興味深いのは、商品ごとだけではない管理も可能になることだ。例えば、クライアントごとの5段階利益管理。 営業系の会社などは、商品ごとはもちろん、クライアントごとの5段階利益管理をするといい。 取引額が大きいクライアントなどは値引き要求も強く、取引額のわりに売上総利益(粗利)が低い場合も多々あるだろう。 また、営業関連の人件費を「販促費」に割り振ることで、「やたら営業マンの手を取られる販売利益の低いクライアント」などがあぶり出される。(P.129) 取引額の多いクライアントは担当営業マンだけでなく、営業アシスタントの手間、人件費の高い営業部長の表敬訪問など、営業の人件費が多くかかっている場合も多いという。 社内でもよく話題に出るクライアントよりも、ほったらかしで、営業マンがほとんど訪問していないクライアントのほうが会社に貢献している場合もある。利益を見ていくことで、それがわかるのだ。 そして5段階利益管理は、経営者自らやるべきだ、と木下氏は言う。細かな数字は社員に丸投げしてしまう中小企業経営者も少なくないが、経営者が率先して導入し、月次で共有せよ、と説く。 自社が利益体質になるよう日々改善するのだ。(P.134) 確実に成長する会社は、こういうことをやっているのである。 上阪 徹(うえさか・とおる) ブックライター 1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。書籍や雑誌、webメディアなどで幅広く執筆やインタビューを手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。著者に代わって本を書くブックライティングは100冊以上。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。著書に『彼らが成功する前に大切にしていたこと』(ダイヤモンド社)、『ブランディングという力 パナソニックななぜ認知度をV字回復できたのか』(プレジデント社)、『成功者3000人の言葉』(三笠書房<知的生きかた文庫>)ほか多数。またインタビュー集に、累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ(徳間書店)などがある。
ダイヤモンド社書籍オンライン編集部