センバツ高校野球 「振りと声」で流れ作る 作新学院応援部部長・吉新さん /栃木
第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に出場する作新学院で選手たちを後押しするのは、吹奏楽部や保護者などアルプス席全体を束ねる応援部の部員たちだ。部長の吉新(よしあら)陽斗さん(2年)は「笑顔で球場を盛り上げて、選手たちが良い流れを作って優勝できるような応援がしたい」と気合十分だ。【鴨田玲奈】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち ◇気合十分、練習にも熱 応援部は1958年夏、野球部が甲子園初出場を果たしたのを機に発足した。甲子園などの大きな大会では、チアリーディング部や吹奏楽部など他部を含めた「応援団」が組織され、応援部長が団長を兼ねてアルプススタンドから声援を送る。野球部の他、サッカー部、ラグビー部、バレーボール部などが出場する大会でも応援を行っている。 2014年まで応援部員は男子のみだったが、女子の希望者がいたことや時代の流れに沿って、15年から女子も入部できるようになった。部員は現在、男子5人、女子6人の全11人。1人は太鼓専門で、他の部員は「振り」と「声出し」で応援をリードする。11人は平日の週5日、濃紺の学ランをまとい、練習に励んでいる。 吉新さんは、今も一緒に部活動に励む白戸健照(はくとけんしょう)さん(同)に誘われ、「土日は練習がない」と聞いて入部、太鼓を担当していた。前部長の青木陽奈さん(3年)から「誰よりも周りが見えている。ぜひ部長をやってほしい」と請われ、昨年9月に部長に就任した。 代替わりを機に太鼓から、声を張り上げながら大きな振りを見せる役割に切り替えることになった。「強弱をつけて、球場に響かせられるような太鼓を極めていきたかったけれど、部長は振りと声でみんなを引っ張っていく役目があるので、やってやろうと覚悟を決めた」と話す。 だが、その道のりは平たんではなかった。野球部以外の応援も含めると、覚えなければいけない曲は約50曲。振りは曲ごとに異なる。「振りを一から覚えるのはすごく大変だった。部長なのに一番できず、みんなに教えることができなくて結構つらかった」と振り返る。自宅では、部員に撮ってもらった振りの動画を見返して、動きを大きく見せるために思いきり肩を回したり、キレを出すために手を素早く動かしたりと、迫力のある応援になるように、細かい部分の練習を重ねた。 また部長は応援の際に一人で声を出す場面が多くあるが、球場全体に響き渡る大きな声を出すのは想像以上に苦労した。昨秋の県大会では、喉の痛みを感じながら声を出し続け、決勝を迎えた頃には「声がカサカサになってしまった」という。だが「声がかれても出し続けていたら、腹から声を出せるようになって、今は喉も痛くならない」と自信を見せる。 センバツまで1カ月を切り、練習にも一層熱がこもる。昨年のセンバツでも応援を経験している吉新さん。「思った以上に球場が広くて鳥肌が立った。去年は太鼓で球場を圧倒させたので、今年は声で圧倒させたい」と意気込んでいる。