「ゆき兄としてもみんなを支えたかった」8LOOMメンバーの綱啓永が振り返る転機となった作品の“秘話”
●すべての基礎を学んだ、リュウソウブルーとしての一年
――その後、現在の事務所(ワタナベエンターテインメント)に入り、芸能活動を始められますが、当時の心境は? 右も左も分からないまま、事務所に入ったこともあって、事務所の方に「何をしたいですか?」と聞かれても、俳優・モデル・アイドル・アーティストといったジャンルの違いすら、よく分からなかったんです。当時はそこまで興味がなかったお芝居のレッスンを受けつつ、オーディションを受けて、なかなか上手くいかなくて、よく怒られていました。だから、その頃は「しんどいな」と思っていました。 ――そんななか19年に「騎士竜戦隊リュウソウジャー」のリュウソウブルー/メルト役に抜擢されます。 小さい頃から戦隊やライダーといったヒーローへの憧れもありましたが、やはり若手俳優の登竜門ですし、歴代のジュノングランプリは誰もが通過する道なので、その歴史を崩しちゃいけないという気持ちが強かったんです。 そんなとき、僕の同期でもある奥野壮ちゃんが「仮面ライダージオウ」に抜擢されて、とても焦っていた中での「リュウソウジャー」のオーディションでした。だから、かなり気合が入っていましたし、プレッシャーもかなりありました。 ――リュウソウブルーとしての一年で、綱さんが学んだことを教えてください。 とにかく、1+1=2のような基本を学ばせてもらいました。挨拶や礼儀みたいなものもそうですし、上手や下手、バミリといった専門用語、カメラ前の立ち位置などなど。本当に当たり前のことですけど、そういうことをすべて教えてもらったのも、この「リュウソウジャー」の現場でした。だから、この1年間は学校に通っているような感覚でしたし、「ジュノン」でグランプリを獲ったことに続いて、僕の大きな転機になった出来事だといえますね。
●ほかのメンバーに支えられた8LOOMとしての活動
――そして、最近の転機ともいえるドラマ「君の花になる」についても伺います。俳優として、劇中のボーイズグループ・8LOOMのメンバー、「ゆき兄」こと古町有起哉を演じつつ、実際にライブなど、アーティストとしても活動されました。 僕自身、初めてのプライムタイムの連ドラ初レギュラーでしたし、BTSさんのようなボーイズグループが好きだったので、役として歌えることも嬉しかったです。だから、オーディションを受ける前からワクワクがハンパなかったですし、合格してからもポジティブな気持ちしかなかったです。 ただ、今もメンバーと会ったときに話しますが、スケジュールなどは、かなり大変でした。通常のドラマの撮影にプラスして、ライブツアーやMVの撮影など、いろいろ重なっていましたから。でも、本当に苦じゃなかったんですよ。眠いとか、身体が動かないとか、そういう大変さはありましたが、メンタル的には本当に楽しかったです。メンバーがあの7人だったからというのもあるんでしょうね。メンバーにはすごく支えられましたし、「ゆき兄」としても、みんなを支えたいなと思ったし(笑)。 最終回から1年後に、X(Twitterの)トレンドワードになったのですが、こんなに愛していただける作品は、なかなかないことですし、僕の中でいま身近に感じている転機の作品といえますね。 ――その後、連続ドラマでは単独初主演となる「恋愛のすゝめ」では、メガネキャラでコミカルな魅力を発揮しています。 このドラマで、初めて座長をやらせていただいたんですけど、みなさんを支えるというよりも、みなさんに支えてもらうという感覚を得られたんです。この感覚を得たことによって、僕も座長をしっかり支えていきたいと思いました。それを知ることができたのが、大きな収穫でした。 ――そして、最新出演映画『違う惑星の変な恋人』では、自分からオーディションを受けられたそうですね。膨大なセリフ量など、普通の作品とは異なることについては? この映画は主要キャラが4人いるんですが、僕が演じたモーだけがオーディションでした。そもそも僕は映画の出演作が少なかったんですが、「君花」が終わり、自分の中でもいろいろ意識が変わったときのオーディションだったこともあり、「絶対受かりたい」という気持ちが強くて、気合い十分で挑みました。 確かにセリフ量は多いですが、この仕事をしていたら、当たり前のことですし、とにかく楽しい現場でした。みなさんとても気さくで、お芝居も自然なんです。いい刺激を受けながら、良い作品にしようという気持ちでやっていました。結果、東京国際映画祭にも出品されて、自分の中で誇れる作品が一つ増えたって思っています。