経営者「うかつだった」拘留社員の“戻れるなら戻りたい”で再出発 歌舞伎町「SOD LAND」の今
『女子社員酒場』から発展した形で、’20年歌舞伎町に華々しくオープンしたSOD LAND。 「オープン当初は、行列ができるほど盛況でした。しかし、歌舞伎町からコロナがまん延しているなどの風評被害もあり、営業ができない事態に……。1年半ほど国の助成金をいただきながら、限定営業をしていました。最初は、カジノのディーラーが真ん中に入っているようなU字型のテーブルの中に女性が入って、お客を接客していた。ところが、これにも警察から指導が入ったんです」(高岡氏) 飲食許可だとキャストがお客と話すことはできない。高岡氏によれば、キャバクラのように隣に座り接客をするわけではなかったので、大丈夫という認識だったという。 一方で、風営法を取得すれば営業時間が25時までになり、店内の設備などにさまざまな制限が生じる。店側のデメリットを回避するために、摘発を無視したのではないかという可能性も拭えない。 それについて話を聞くと 「われわれも、営業時間や店内の明るさなどは飲食許可に従っていました。店の営業時間自体もそもそもが深夜0時まででしたし、指導が入ってからはU字型のテーブルも撤去し、立ち飲み屋にあるカウンターテーブルに変えました。でも、風営法を取らずに接客すること自体が違法だったので摘発に至りました。会社としては、2度目の指導が入った時にも風営法を取るかどうか協議しました。しかし、“飲食業でいこう”というポリシーを優先してしまった。うかつだったと思います」 という、回答が返ってきた。 風営法で許可を取るためには、大幅なリニューアルが必要だった。オープンに2億円以上かかったとうわさされているSOD LAND。改修のためにさらに費用がかかっている。 「いちばん問題となったのが、4階にあったマジックミラーの部屋。風営法で高さが1m以上ある壁や衝立はフロアに置くことができない。数千万円かけて作ったフロアを壊さなくてはならなくて……(苦笑)。見積もりを取ったら500万円ほどかかると言われて青ざめました。結局、スタッフや僕も解体作業を手伝って、50万円まで抑えることができました。そうやって風営法の許可を取るためにはいくつもの壁がありましたね」(高岡氏) SOD LANDは、5ヵ月間休業ののち風俗営業1号許可を取得して’23年8月に再オープンした。地下1階から4階までそれぞれコンセプトを変えたバー形態で営業している。実際に改修をされているのか確認するため、各フロアを偵察した。開放感のある作りで、明るい店内。最初から風営法の下、営業許可を取っていなかったのが惜しまれる。 「ここは客単価が1万円くらい。客層はサラリーマンが多いので、キャバクラのように何万円もかかってしまうようなお店ではないんです。最近は、月200人ほど海外からのお客さんがいらっしゃっています。近距離で触れ合えるフロアは会話をしなくても楽しめるので人気ですね」(高岡氏) 店舗責任者だったスタッフは拘留中も「戻れる場所があるなら戻りたい」と、再び働きたいという意思を示した。こんなに大変な思いをしてまで店に戻ろうと思った経緯について話を聞くと「これだけ大きな会社なので、これからはきちんと問題をクリアにしてくれるだろうと思いました。それに、みんなが楽しく働いていた場所が、なくなってしまうのは申し訳ないと感じた」という。 捜査が入った時に店舗で働いていた女性キャストも、復帰している。 「早く復活をしないと、女性たちの働く場所がなくなってしまうっていう危機感がありました。キャストは、今は200人ほど所属しています。女優が半分で、あとは風俗店勤務の方。最近は、一般職の方も増えていますね。普段は歯科助手やテレアポの仕事をしながら、副業として働いている素人女性です。あるインフルエンサーはSOD LANDで働くようになって、フォロワーがゼロから5万人まで増えたケースもあります」(高岡氏) キャストや客の笑い声が響く店内。事件後もこうして戻ってきてくれたキャストやスタッフのためにも、前回の指摘時のような認識の甘さは今後一掃してほしい。なにかと悪いイメージのつきまとう歌舞伎町だが、SOD LANDは警察の指導の下、スタッフや女性たちが働きやすい環境を提供し、3度目のスタートを切っている。 取材・文:池守りぜね
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