雨の街路で和傘を差す着物姿の女性、これぞ戦前の昭和の風情に満ちあふれた珠玉の1枚
何を見つめている? 想像をかき立てられる姿
和傘を差した着物姿の女性たちが、雨の街路ですれ違う。左の女性の足元をよく見ると、雨よけの爪皮(爪掛)の付いた高下駄(げた)を履いている。1933(昭和8)年3月号の特集「日本の車道」の1 枚で、雨の日には「フェルトを張った繊細で軟らかい草履」をぬらしたくないから下駄を履くのだと伝えられている。右の女性も高下駄を履いているようだ。 ギャラリー:ナショナル ジオグラフィックが見た日本の100年 下駄の高さは「15センチに達するものもある」と解説されているが、写真の下駄はそこまで高くないように見える。 この街はどこだろうか? 路面は舗装されているようにも見え、奥には自動車が止まっている。記事には場所が記されていないため、ナショナル ジオグラフィックの写真資料室に保管されたプリントの裏を確認すると、神戸で撮影されたと書かれている。ただ、詳しい場所まではわからない。せめて、奥にぼやけて見える看板の文字が判別できればいいのだが。 それにしても、女性は何を見つめていたのだろう? 想像をかき立てられる。 ※この記事はナショナル ジオグラフィック日本版2024年6月号に掲載されたものです。