【ラグビー】山田章仁の日。キューデンヴォルテクス今季初勝利をリーグ通算100トライ+αで飾る。
YMCAラグビースクールを経て入った鞘ヶ谷ラグビースクールでは、力のあるチームメイトの「宮川君」との1対1の練習で負けん気を育んだ。県下有数の進学校である小倉高を経て、慶大に進んでからは若きファンタジスタと遇され人気者となった。 ホンダヒート(現・三重ホンダヒート)、三洋電機およびパナソニックワイルドナイツ(現・埼玉パナソニックワイルドナイツ)、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス(浦安D-Rocksの前身)を経て、昨季から現所属先にいる。 リザーブの切り札として3部からの昇格を決め、今季はここまで2試合連続でスターターを務める。昨年10月から指揮する今村友基ヘッドコーチ代行は、山田の起用理由について説く。 「あれだけのパフォーマンスを見せられると、80分、(フルで)使いたくなります。昨季は後半からいいインパクトを与えてくれましたが、今季はディビジョン2に上がっていて(強敵が増えたため)前半からいいパフォーマンスをしないといけないなか、彼を先発で起用しています」 大記録のかかる舞台へも、迷わずに送り出したわけだ。レコードクリアまであと1トライを残して地元で戦うという出来過ぎたシチュエーションのなか、「期待」に「応え」たアスリートに関し、指揮官はこうも言った。 「獲るべくして獲ったトライだと思います。普段の取り組みもプロフェッショナル。周りの選手にとっても見習うべきところが多いです」 ここに補足するのは、あの瞬間にラストパスを送った中島だ。26歳の社員選手は、山田ら専業のチームメイトの日常についてこう述べた。 「試合前のストレッチひとつをとっても、お手本になります。グラウンド外でも練習や対戦相手の動画を見ていて、本当に熱心です」 ノーサイドの合図を聞くと、まもなくセレモニーが始まる。この日の主役は正面に見据えるメインスタンドだけでなく、自身の背後に立つスポンサーボードの後ろのバックスタンドへも手を振った。 チームが昨季から作っていた記念Tシャツをまとい、家族から受け取った花束を抱いて叫んだ。 「きょうは、勝ったばい!」 拍手を浴びる。即席の青空ステージを離れる折、右手に並ぶシーウェイブスの選手に軽く会釈。左手に待つ同僚のもとへ戻った。 (文:向 風見也)